次は転移の眷属
『あたいは最初っから囮でしたか……ならば、囮らしく大暴れです!ソラン様、先に討ち取っても文句ありませんね!』
『ふん、遅かったな。今斬ったぞ』
『えぇーーー!?』
シースナの間の抜けた声とともに幻術が解ける。
四つん這いになった俺の隣には偶然にもジェイがいた。
邪神の眷属のフリをして、移動しているうちに彼の隣まで来ていたようだ。
ジェイは少し引いた表情で、無様な四つん這いの俺を見つめている。
「ユースケ様……そこまでして戦いたくなかったんですか?」
「何を言うジェイ。この集団では、俺はお世辞にも強いとは言えない。まだまだ戦いは序盤だ。そんな中で戦い続けてたら後々俺は疲れてお前たちの手を煩わせることになる。故に、戦略的に、大局を見て、俺は、苦渋の決断を講じ、インテリジェンスに」
「分かりました。分かりましたから無理して難しい言葉を使おうとしないでください!」
だんだん早く口になる俺を憐れに思ったジェイは、言い訳タイムを止めてくれた。
「もう幻術は無いんだから立ってくださいよ」
「そうだな」
よっこいせと立ち上がり、ジェイと共に邪神の眷属の攻撃を捌き反撃する。
転移の眷属に立ち向かうのはソラン、シースナ、ヴァイオレット、ジョーカー。それに加え、イーナとアキトの6人。
対して奴が転移させられるのは3組6人。6人が自分を狙ってる現在、転移の眷属を全員にすると場所が入れ替わるだけだ。
多少の混乱は生じるがその程度、残された手は3人を遠くへ飛ばし、残り3人の相手をするだけ。
つまり俺達に転移の妨害をする余裕はない。これで防御だけでは無く攻撃が可能になったわけだ。
「おっと!」
俺が斬ろうとした邪神の眷属がソランに変わった。幻術の眷属はさっき倒されたから幻術の偽物じゃない。
ソランが俺の目の前に転移させられたんだ。
そうか。こういう妨害の仕方がまだ残っていたか。失念していた。
しかし、さすがソラン。オレの攻撃をいとも簡単に防いだ。
「咄嗟に防ぐとはさすがだなソラン」
「転移先がユースケ様の目の前で助かりました。ジェイだったら一撃もらっていたかもしれません。」
「はい不敬ー」
「あはは」
ソランの冗談に俺も返すと、ジェイは愛想笑いする。
ソラン以外だとヴァイオレット、ジョーカーが飛ばされたようだ。
6人の中で強い方の3人を飛ばしたのは見事だが、シースナ、アキト、イーナが弱い訳では無い。
ダンジョンマスターを甘く見たな。あいつらは全員が一騎当千の強者だ。




