邪神との戦闘開始
「どっちが悪者なんだか……ん?」
ドームの中には数え切れないくらいの邪神の眷属がいた。
しかし、その中に俺たちもいる。それも一人二人じゃない。
「すでに幻術の中ってことか?邪神は……でっかいなあ」
眷属に囲まれるように巨大な邪神は鎮座していた。
シルエットは概ね筋骨隆々な大男。しかしその肌は青黒く、体の至る所からタコ足を彷彿させる触手をうねらせている。
頭部にはただ一つ巨大な目がついており、ずっと俺たちを見つめている。
「それじゃ、頼んだよ!」
そう言って先輩は短剣を邪神に投げつける。
短剣の柄から光線が先輩の方へ伸びていき、それを掴んで邪神の元へ飛んでいった。
先輩がドームの中に入った途端彼の体が邪神の眷属の物になる。
「中に入ったら俺たちの姿も変わるようだな。ソラン、シースナ。焦らせるつもりはないが、なるべく早く倒してくれよ」
「承知しました」
「皆さんも気をつけて」
俺たちもドームの中へ入ると、仲間たちの姿が変わっていった。
2匹の邪神の眷属が俺たちの中から飛んでいく。ソランとシースナだ。
姿が変わってるし数も多い為分からないが、幻術を掛けている邪神の眷属は二人の行った先にいるのだろう。
「よし、みんな同士討ちには気をつけろよ!」
俺の視界が急に変わる。転移の眷属の仕業か。
周りにいた邪神の眷属たちが襲いかかってくる。
剣を持ったジョーカー、四つん這いのヴァイオレットの攻撃をかわし、普通の見た目の邪神の眷属の足を払う。
四つん這いのヴァイオレットは体は犬で頭は魚のやつか?ジョーカーの武器も違うし、幻術は体の見た目を変えるだけか?
『強いやつは居ないけど、資格情報が喧しい奴らが多いわ』
『リーチを読み違える心配が無いのはありがたいっすけどね』
事前に繋いでおいた念話でヴァイオレットが愚痴を言い、アキトがそれに答える。
確かに剣の見た目で実は槍だったら、攻撃を避けたつもりでも当たってしまう。
『うわ、腕が十本のソフィアがいる。痴漢の眷属じゃないですかあれ?』
ジェイの呑気な報告に思わず吹き出しそうになったが気を引き締める。
もしかして、俺たちを笑わせて隙を築こうとしている?……んなわけないか。
「しまった!」
邪神の眷属の1匹に足払いをされて前のめりに倒れてしまった。
油断したわけではない。あまりにも敵が多すぎた。
『主殿、目を閉じろ!』
妖精の剣の言う通り目を閉じると、瞼の裏からでもわかるくらいの光が迸る。目眩ましのフラッシュだ。
早く体勢を立て直さないと。




