突如わかるソランの優しさ
まず、作戦に参加するのは先輩、光、聖女、イーナとアキトを抜いた俺たちダンジョンマスター組。イーナとアキトは船の護衛だ。
ドームに侵入し円滑に邪神を叩くには、3体の特殊な邪神の眷属を倒す必要がある。
まず1体目、男と女のマネキンを背中合わせに合体させたような見た目の眷属。こいつは敵味方を最大6人を入れ替わりで転移させる能力がある。
敵を切ろうとしたら味方に入れ替わって同士討ちという結果を招く恐れのある敵だ。加えて今から説明する2体目との連携で更にたちが悪くなる。
2体目は3メートルほどの魚。先輩曰く、恐ろしく速い。そして一番厄介なのは幻影を使って敵を味方に、味方を敵に誤認させてくるのだ。
転移と幻影それぞれ個別ならば、味方の位置を覚えるなど慎重に戦えば何とかなるが、敵か味方がぱっと見分からんやつをランダムに入れ替えられたら、もう訳が分からんことになる。
幸い声の判別はつくので、合言葉を用意した。
「ぬるぽ」
「ガッ!…………これ何なんですか?」
「そういうもんなんだよ。はい、3体目は?」
3体目は腕が五対ある魚人。その腕は伸縮自在で触れられると生命力を吸収され、ものの30秒で死に至る。
だが、その腕は脆く、俺や光でも簡単に切り落とせるらしい。しかし、こいつの厄介なところはがっしりと掴んでくるだけではなく、気づかれないくらいのソフトタッチで触ってきて、切り落とせないくらい生命力を奪ってから力を入れて掴んでくるという、場面が違えば変態のような動きをしてくる。
腕が一対だったとしたら間違いなく痴漢だ。
変態ではあるし一対一ならかなり苦戦しそうだが、複数人でカバーしあえば3体の中では一番与し易い。
その3体を倒し、先輩、聖女、光をフリーにして邪神との決戦に臨むのが最初の難関だ。
さて、ではこの3体をどうやって倒すかだ。
まず、一番優先して倒さなければならないのは、幻影の眷属だ。
こいつを倒しているのと倒していなのでは、他の眷属との戦いの難易度も大きく変わる。
こいつの相手はソランとシースナ。ソランには『正直』という権能があり、ソランに嘘をつくと幻覚を見たり、ソランと戦うとき他の何者かに操られてたり洗脳されていると能力が落ちる効果がある。そして最大の効果はソランに嘘は通じないというものだ。
あれ?じゃあ今までの俺のそれっぽい態度で誤魔化してたのバレてた?
指摘されなかったのは、ソランのやさしさか。俺がアンポンタンなのに虚勢を張ってデキる奴を演じてるのを見守ってくれてたんだな。




