何故かヴァイオレットと戦わされる
へー、聖属性魔法ってそんな仕組みだったのか。
俺が回復魔法のスクロールをばら撒くまでは、冒険者で回復魔法を使える人材は貴重だったとジェノルムは言っていたな。
やっぱそれなりに使えるまでにふるいにかけられるんだな。
「それは分かったんですが、結局奪われた記憶の共通点って先輩の予想は何だったんですか?」
「これも多分……毎度自信がなくて申し訳ないんだけど、本人にとって一番大切な記憶だと思う。聖女ちゃんは普段の言動を見ての通りだし、ヴァイオレットも雄亮君にお熱だったでしょ」
「え?」
「え?」
予想外の指摘に俺が素っ頓狂な声を上げると、皆マジかコイツといった視線を向けてきた。
「中途半端とは言え、ラブコメイベントモドキをちょいちょいやっててその自覚?」
「いや、確かにヴァイオレットから好かれているなーって自覚はありましたけど……何百年と生きた中で一番てのは……言ってみて思ったけど、ちょっと照れるなぁ」
「本人の眼の前で堂々と気味の悪い話をしないで頂戴」
口元が緩んで少々だらしない表情をした俺を見て、ヴァイオレットは深々とため息をついた。
「ねえ、あたしって本当にこれのこと好きだったの?」
「ククク、我々が見ていた限りでは。なかなかくっつかないと焦らされてましたが、暖かく見守っていました」
あっさりとジョーカーから肯定されて、ヴァイオレットのこめかみがピクピクと震える。
そんなに俺のこと気に食わないかな。
初対面の時は…………パンツ見たから今よりも嫌われていたか。
「気に入らないわね。あんた、ちょっと来なさい」
ヴァイオレットはそう言って船から飛び降り、海底都市とは反対方向へ走る。
俺も付いて行き、数百メートル程走ったところで彼女は止まった。
「急に何だよ?」
「抜きなさい」
「脱ぎなさい?」
「ぬ・き・な・さ・い!あたしが認めたって言うあんたの実力、直々に確かめてあげる」
戟を豪快に振り回しながらヴァイオレットは俺をじっと見据える。
「俺はダンジョン内でスライムの物量だよりで腕はからっきしなんだが」
「それでも、矛を交えれば分かるものがある」
いつの時代のバトル漫画の考えだよ。
そう突っ込みたかったが、彼女の真剣な表情を見てるとこれ以上茶化せそうにもなかった。
「本当に強くないから手加減してくれよ」
「ええ、身代わり人形は持ったかしら?」
殺す気じゃねーか!
渋々妖精装備を身に着けて、ヴァイオレットに剣を向ける。
「くそー!どうにでもなれー!」
結果、3回殺されました。でも殺されるまでに最長10分粘ったから俺の中では大金星だ。




