扉の電撃解除
「ユースケ様、これは一体…………」
大きな音で起きたのか、ソランは怒りに任せて武器を研ぐ先輩と、それを不安そうに見つめる俺というカオスな光景を見て、過去一困惑した顔をした。
ソランに続いて全員起きたので作戦会議を、と思ったが、先輩は何も言わずにすごい速度で、ドームへ飛んで行ってしまった。
訳が分からないと言う顔をしている皆に、俺と先輩に見せられた夢のことを説明して、ひとまず塔へ向かう。
「しかし、あの縁殿が怒り狂うとは……ククク、一体何を見せられたのでしょう?」
ジョーカーがドームの方を見ながら呟く。
現在ドームは、数分おきに爆発四散しては修復を繰り返している。
爆発した時に大きな影が見えたが、あれが邪神なのだろうか?
昨日の宣言通り、出し惜しみは無しのようだ。
夢の件もあって、先輩の攻撃は苛烈を極めるだろう。しかし、あの出力で一体どれだけの時間保つのだろう。
先輩のスタミナが切れる前に、手早く終わらせないとな。
「そう言えば、今日は邪神の眷属を見ませんね」
昨日、しつこく襲ってきた邪神の眷属たちは、それが嘘のように姿を現さなかった。
「楽観的に見るなら先輩の対応に駆り出されている。悲観的に見るなら、俺たちを一網打尽にするために待ち受けているか」
「前者であって欲しいですね」
光の希望通り塔で待ち伏せされていたということはなかった。
昨日とは反対側に伸びているパイプを、掘り起こしながら進む。
人手が昨日の倍居るし、邪神の眷属も居ないから作業速度も段違いだ。
「こっちには……居ないですね」
魔力を供給する装置があると思われる建物をソフィアが探るが、何事も無く停止スイッチを押すことができた。
「おかしいな。絶対どこかで仕掛けてくると思ったのに……恐るべきは先輩の怒りパワーってことか?」
本当に怒った先輩の対応に追われてるならば、邪神のやったことは完全に藪蛇だな。
一応、塔に戻るまでの道も警戒していたが、やはり何も無くたどり着けた。
そこで息のあったダンジョンマスター男性陣に、光はジリジリと扉の前へ押し出される。
「え?ちょちょ、何ですか!?」
「ほら、多分電撃は止まってるからさ。開けてくれよー」
「なんで僕が!強制なんですか!?」
昨日の電撃の恐怖を思い出した光が力尽くで抵抗を試みるが、押し出している誰もが彼よりも腕力があるため、ビタリと扉に押し付けられた。
手でノブを掴むよりもひどい光景だ。
電撃は……もちろん流れなかった。




