女のプライド
「それは明日ね。ジョーカー、信号弾お願いできる?」
「ククク、承知しました」
先輩に頼まれたジョーカーが空(天井?)に青い信号弾を上げる。
これは事前に決めていた目的達成、帰還しろという意味だ。
黄色は緊急、増援頼む。赤は緊急、船まで逃げろだ。
今思ったんだが、海の天井に青の信号弾は視認性悪いな。向こうのグループが見逃さなければ良いのだが……音も出しているから多分大丈夫だろう。
当然、信号弾は邪神の眷属からも見えているから素早くそこから撤退する。
行きとは違って帰りは、邪神の眷属とは一度しか戦闘にならなかった。
やはり信号弾を上げた地点へ向かっているようだ。
魔法を使えない先輩は弓で援護してくれた。身体強化もしていないのに百発百中なので心強かったが、50本も矢を撃つと疲れたのか、へたり込んでしまった。
「まじで体力無いんですね」
「いやいやいや、常人並みの身体能力でこれは凄いほうだからね」
先輩の弓を引くと、かなり力を入れないとだめだった。これを身体強化無しで50回も打つのか……。
しかも百発百中でか……この世界に来たばかりの俺だったら到底無理だな。
「これだと先輩が素で凄いことになりますね」
「あれ?僕悪口言われてるかな?」
不満顔の先輩をおぶって船へ向かうと、途中でソフィアたちと合流できた。
無事再開できたのに、彼女たちはなんだか暗い表情をしている。
「そっちは何かあったか?」
「いえ、それが」
どうやら彼女たちは、信号弾が上がってからこちらに来るまでに例のタコ足と遭遇したらしい。
戦闘態勢を取ると、タコ足が何かを探るような動作をした後、何もせずに去っていったそうだ。
「私たちってそんなに魅力がないでしょうか……」
ヴァイオレットがさらわれた件も含めて、どうやら女として不満らしい。
あのタコ足に認められても嬉しくはないと思うが、そこは女のプライドの問題というやつだろう。




