ボロボロの先輩
「オホンッ、ま、まあ光のレベルもまだ低いし、これからさ。さーって行こうか」
光が俺の言っていることがブーメランである事を気づく前に、少々強引に話を切り上げて先を進む。
ダンジョンマスターくらいの実力になると、レベル差なんてあってないようなもので、もともとの戦闘センスや経験が物を言うが、光はまだまだその域に達していない。
これもまたブーメランだがな!
『それにしても散々眷属を吸収しているが、何か変化はあったか?』
『純粋に使用する魔法の威力が上がっている。とは言え劇的に変化したとは言えないが……』
『うーん、ちりつもか?先輩が戦ってる邪神を吸収すれば分かりやすく強化されるのかな?』
「だめだめ、そんなことしたら妖精の剣のほうが乗っ取られちゃうよ」
「先輩!?なんでここに」
俺と剣の念話に当たり前と言わんばかりに、先輩が割り込んできた。
しかし今の彼はボロボロの姿。器用に片手で反対の腕に包帯を巻きながら息を整えている。
「お?ありがとうねジョーカー君。今日はもう無理だ。魔力すっからかん。魔力回復手段が無いわけじゃないけど、生贄を解放できてもないのに、邪神をここから脱出できるくらい消耗させるのをそこまで急がなくてもいいし。あ、見つかるのか心配?もちろん向こうもかなりダメージを受けているから安心してくれよ。少なくとも数時間はこっちを探る余裕なんて無いはずだから」
気を利かせたジョーカーに包帯を巻いてもらって、先輩はカバンから出した炭酸飲料をごくごくとうまそうに飲み干した。
「あ゛ぁー疲れたー。やっぱあいついつもより強い。ヴァイオレットが攫われてまだ数時間だからほとんど聖女ちゃんの力だなアレ。神力を吸収してたのは初めてだから、あそこまで強くなるとは思わなかった」
落ち着いてきたのか、先輩の口からは邪神に対しての文句がつらつらと出てきた。
どんな事でも先輩はサクッと片付けるイメージがあるが、ここまでボロボロにされるとは……タコ足もかなり手強かったが、邪神本体はどれだけ強いんだ?
「それで?君たちは何をしていたのかなーっと……あぁ、こういう感じね。このパイプは何本あったの?」
「これを含めて2本です」
「もう片方は?」
「まだです。最初にこっちを辿ろうとしてたところに先輩が来ました」
「オッケー、それじゃあこっちを片付けたら今日は終わろうか。初日でここまで順調だとは……やっぱり君たちは優秀だ」
2月頃からカクヨムで少々加筆修正した物を投稿しています。
ほとんど違いはありませんが、良ければ向こうでも読んでみてください。




