なぜヴァイオレットが狙われたのか
「ここと、タコ足のことは分かりました。そんじゃあ、何で俺らは襲われて先輩がここにいる理由を教えてもらえますか?」
「放置すると封印が弱まるから定期的に見に来てるんだよ。そしたら丁度、君らが引きずり込まれてたから慌てて船に飛び乗ったんだ。ちなみに、ここは力に強まった邪神のせいで僕でも外界に逃げられないから、まずは奴を弱体化させるしかない。それとヴァイオレットも救出しないと」
「そうだ!ヴァイオレットは無事なんですか?」
そもそも何でできるあいつだけ攫われたんだ?
その理由も先輩に聞いた。
「そりゃ、生贄だよ。まあ、大丈夫さ。まだ命は取られないから。名も無き邪神は汚れなき乙女の記憶を食らう。だからヴァイオレットが狙われたんだ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
先輩の説明をソフィアたちが遮ってくる。
一体どうしたんだ?
「私たちも乙女なんですが!?」
「うんうん」
「処女処女」
顔を真っ赤にして己の純潔を主張するエルフ三人娘。何をそんなに必死にアピールしているんだ?
そんなに重要なのだろうか?こちらをチラチラ見るな。
「単純に処女歴の長さだろうね。ヴァイオレットは君らの中で一番年上だろ?とんでもない長生き処女パワーを感じたから邪神は彼女を攫ったんだよ」
先輩の説明に、なぁんだと胸をなでおろす3人、フェリスも地味に安心している。
処女であることがそんなに大切なのか?童貞の場合はむしろ隠そうとするもんだが……。
「イーナはともかく、シースナは……」
「セクハラですよ。ユースケ様」
「ごめん」
どうでもいいがシースナが邪神の攫う対象かどうかは謎だ。
「にしてもヴァイオレット一人の力を吸っただけにしては強くなり過ぎている。まだ被害者が居そうだ。本当なら、皆を封印の外に逃がしてヴァイオレットを救出して封印し直す予定だったんだけどなー。僕の想定よりも邪神が力を取り戻している。雄亮君たちにも協力してほしい」
「もちろんです。こっちだって仲間を攫われているんだ。俺達のするべきことはなんですか?」
「…………その前に彼らにも説明をして、現状の情報共有しないとね」
先輩が指さした方向には、今しがた起き始めたタラッパ船長たち…………ではなく船の外からこちらを警戒しながら近づいて来る集団だった。




