名も無き邪神
「雄亮君。雄亮くーん!」
頬をペチペチと叩かれ、俺は目を覚ました。
俺を起こしたのは縁先輩。彼は横になってる俺を立って見下ろしている。あれ?なんでこの人がこの船にいるんだ?てか渦潮はどうなった?
「お……おぉ!?」
先輩の後ろ、即ち上空が青い!大空の水色じゃない。深い青……海だ!海が天井になってる。
「まあまあ、落ち着きな。別に降ってくるわけじゃないから」
確かに先輩の言う通り、上空の海は圧迫感はあるものの完全な静寂。先輩のお陰で少し落ち着いてきた。
深呼吸して周りを見渡すと、石造りの廃墟……町が遠くに見えた。その先には巨大なドームが見える。一体何なんだここは?
「ユースケ様、ご無事で?」
「ここは……海底?」
「うわわわわわっ」
仲間たちも意識を取り戻し始めた。タラッパ船長や船員たちまだ気を失っている。
フェリスはこの状況がキャパオーバーなのかオロオロしている。
「先輩、ここはどこですか?」
「ここかい?ここは海底都市エンドループ。名も無き邪神を封じた場所だよ」
わざとらしいNPCみたいな受け答えに少しイラッとする。しかし、この人何でも知ってるなー。
と言うか邪神か……キギ・ガガといい最近縁があるな。
「邪神て言うとキギ・ガガのようなもんですか?」
「いいや、あんないつでも消滅させられるような小物とは比べ物にならないよ。名も無き邪神は不死不滅の存在。その所業と恐ろしさから人々が名前すら後世に残さまいと忘れ去られてもまだ強大な存在だ。僕がここに封印しなかったら世界を滅していたかもしれない程のね」
ギギ・ガガでも恐ろしかったのに、ここに封じられている邪神は伝えることすら許されないってことか。
「そんな恐ろしいものを先輩はなんで倒さなかったんですか?」
「無茶言うなよ。不死不滅って言っただろ?戦闘力も中々なもんだし、エスリメに居る君には言ったけど、僕は事前に入念で完璧な準備をして戦うタイプなんだ。そしてその準備をしても倒せなかったから封印したんだよ」
「はあ、そんな相手をよく封印できましたね」
「仕事柄強力すぎたり、不死不滅の相手は珍しくないからね。格上は封印するに限るし、僕自身封印される事もあるから封印方法やその対処方法もたくさん研究しているんだ」
仕事柄ってどんな仕事してるんだよ。それも向こうの俺に言ったのだろうか?




