攫われるヴァイオレット
「ユースケ様、ボーッとしちゃ駄目」
「あ、ごめん。しかし、どうしたもんかなぁ」
少し気を抜きすぎたか。だが、油断したのにも理由がある。先程からのタコ足の動きを見るに本気で俺達を殺そうとしている気配を感じない。
ソランがを船に叩きつけられる程の力があるなら、最初の一撃で船を沈められる。砲弾を打ち返す速度もそこまで速くなくどこか手加減されている気分になる。
こっちを本気で殺そうとしない理由は何だ?それがどうしても引っかかる。
ただ遊んでいるだけ、なにか助けを求めるアピール、生きた餌しか食べない習性……どれもしっくりと来ない。
「みんなはあのタコ足の目的は分か……ヴァイオレット!」
「んっ?」
みんなの意見を聞こうと俺が口を開け全員から注目された一瞬をついて、タコ足がヴァイオレットを明らかに狙った動きをした。
思わず叫ぶが、ちょうど俺を見るために後ろを振り向いていたヴァイオレットは反応が遅れてタコ足に捕まってしまった。
「きゃっ!この!」
ヴァイオレットは持っていた方天画戟でタコ足を斬ろうとするが傷一つ付かない。
ジョーカーとシースナがタコ足に飛び掛かり攻撃するが、そちらも意に介さずヴァイオレットごと海の中に逃げてしまった。
「ヴァイオレットォ!」
逃げたタコ足に続いて他のタコ足たちも海中に潜って逃げていく。
被害を受けていなければ、よく分かんなかったけどとりあえず良かったねで済ませられるが、ヴァイオレットが連れ去られているんだ。
どうやって追いかける?ヴァイオレットは大丈夫か?呼吸は……魔法でどうにかなる。そこらのモンスターにそう簡単にやられる女じゃないが、タコ足もかなり強力だった。
彼女の攻撃はタコ足にきいているように見えなかった。向こうの攻撃も彼女なら耐えられそうだが、無傷でいられる時間が長いとは思えない。




