ジェノルムと相談
俺は午前のギルドの書類仕事終え、今は昼食を取っていた。
昼食は俺の最愛の妻が作ってくれた弁当だ。
妻とは俺がギルドマスターになる前の冒険者時代からの付き合いで、もう十五になる息子と十二の娘がいる。
そういえばあのおかしなダンジョンマスターも息子と同じくらいの年だったか。
いや、ダンジョンマスターは不老の存在。見た目で判断はできない。
そう考えていると、クローゼットからひょっこりと、そのダンジョンマスターが出てきた。
「ジェノルムさん。こんちはー」
「ぬおっ!……ユースケか⁉一体どうやって来た?そして何故クローゼットから出てきた?」
ユースケは最近出現したスライムダンジョンのダンジョンマスターで、本来ならば俺たち冒険者の敵となる存在なのだが、こいつのダンジョンは特殊すぎる上に人類への恩恵が絶大なため、ギルド含め至るところから暗黙の了解で保護されている。
そんなダンジョンのダンジョンマスターなのだから破天荒なのは分かるが、何故クローゼットから?
「スライムにこのクローゼットまでテレポートゲートを持ってきてもらったんですよ。もちろんジェノルムさんも使えますよ」
「お、おう」
いつの間にそんな事を……一応ここギルドで一番警備を徹底させてる筈なんだがな。
そういやこいつは全てのスライムに命令できて、そのスライムたちは世界中に居るのだったな。もうこいつ世界征服できるんじゃないか?
いや、でも所詮スライムか。でも進化種を使われたら、うーん。
「それで今日来た用事なんすが」
「お、用事あったのか」
「何の用事もないのにここまで来ませんって……」
それもそうか。ダンジョンの中でしか本領発揮できないダンジョンマスターは余程のことがない限り外に出てこないと言われている。
テレポートゲートを使ったとはいえ、ダンジョンマスターがそうやすやすと外に出るはずが無い。なにか大きな事件が起きてるのかもしれない。
「分かった。聞こうじゃないか」
ユースケが持ってきた話を聞くにつれて、俺の常識が、ガラガラと崩れていった。