大人には責任がある
生存報告。遊んでました。
「リカヤ、ここに居たのか」
「…………お兄ちゃんか」
ガガ討伐戦の夜が明け、俺は湖の畔でリカヤがしゃがんでいるのを見て彼に声をかけた。
「どうしたんだ?元気がないな。せっかくガガを倒して自由になれたんだ。もっとはしゃげよ」
「いや、もちろん嬉しいんだけどさ」
どうもリカヤは浮かない顔をしている。ずばりこれは……失恋と見た!
「けどさ?」
よしよし、年上のお兄さんが少年の悩みを聞いてあげよう。そっち方面の経験値皆無だけど。
「外の世界に行きたいとはずっと思ってたけど、いざ自由になってみるとどこに行こうか決められなくて」
…………くだらねー!さっさと旅しろや。どんだけ贅沢な悩み抱えてるんだ。心配して損したわ。
「じゃあエスリメはどうだ?俺の国だ」
「お兄ちゃんの?」
「ああ、エスリメは世界中と繋がっていて、行きたいところにはすぐに行ける。逆にエスリメには世界中のあらゆるものが流通している。世界を見たいお前にピッタリじゃないか」
俺がそう言うと、リカヤは爺様の日記をギュッと抱きしめた。
「自分の足で旅したいのか?」
「なんて言えばいいのかな。僕、この本を書いた人みたいに自由に生きたかったんだ。そう、今が僕の夢見た状態だったんだよ」
「そうか。だが、自由に生きるにしてもなにか目標は必要だろ?」
「うん!僕、エスリメに行ってみるよ。それからのことは行ってから考えてみる」
悩みの晴れたリカヤは軽い足どりで湖の中へ帰っていった。
あの様子だと、俺が話しかけなくても自分で解決してただろうな。
「リカヤは自分の道を見つけたようですけど、貴方はどうするんですか?」
俺がそう言うと、木陰に隠れていた爺様がのそっと出てきた。
「なんじゃ、分かっておったのか」
「近くのスライムが教えてくれました」
そう言うと爺様は苦笑した。
「儂はリカヤについて行くよ。いくら自由と言っても保護者は必要じゃろう」
「今度こそ大手を振って旅をできますよ?」
俺が聞くと爺様は首を振った。
「若い頃好き勝手やったんじゃ、当時の大人たちと同じように若者たちのこれからを見守るとしよう」
「せっかく自由になったのに」
「大人というのは生きてる限り何かしらの責任を持ってるものなのじゃよ」
「そんなもんですかね。俺は無責任に生きてますけど」
「それはお主がまだ子供か、代わりに誰かがお主の責任を負ってくれてるということじゃろう」
「てことは俺はまだ子供ってことですね。俺の代わりはいませんから」
俺の言葉に爺様は目を丸くして、その後口を大きく開けて笑った。




