弱い駒
「う、うぅ」
気づくと俺は簀巻きにされていた。ご丁寧に足も縛られていて、手をグーパーすることしかできない。
何だ俺は拉致でもされたのか?…………待て待て思い出してきた。そうだ!俺は何者かの声に唆されて…………あ?
「いんあ、ふいか!?(みんな無事か!?)」
「はい、全員無傷です」
猿轡をされて、モガモガ言ってる俺の謎言語を聞き取ったソランはそう返した。
自分で言っといて何だけど、どうしてソランは普通に会話できるんだ?
「ユースケ様の言いたいことならある程度予想できます」
「ほ、ほーあ。おいあえふほへはうはいへうえ(そ、そうか。とりあえずこれ外してくれ)」
俺の近くにはソランしか居らず、他の皆はアキトとイーナを爺様たちの護衛に残し、ガガを袋叩きにしてる。
ガガはあまり見た目ほどダメージを受けてないが、ヴァイオレットたちに対する攻撃はかすりもしていない。
聖属性の攻撃がなければ千日手か。
「残念ながら今ユースケ様を自由にするわけにはいきません。先程ユースケ様はギギに操られて、リカヤを襲おうとして止めようとした我々に自害しろと命令しようとしました。幸い口を開く前にこの様に拘束できましたが、我々はユースケ様の命令に逆らえませんから」
「ん?あらほへをほへっへえいえいは?(ん?ならこれを解けって命令は?)」
「これは実際に命令を受けてるのではなく、予想して返事をしているだけなので。それと我々がユースケ様に害を与えられないのにどうして拘束できるかですが、これは害ではなく必要な対処だからできたのです。手術でメスを入れるのと同じですね」
はえー、俺が疑問に思ってても口に出さなかったことも教えてくれた。それにしても同盟のルールちょっとガバくない?
「へお、いははああうあへえあいお?(でも、今は操られてないぞ?)」
「今のユースケ様を操っても無駄に力を消耗するだけですからね。拘束を解いた途端に操られると思います」
「あへ?おういやおえやおえうぁいおえっおいあうあえあお(あれ?そういや俺宿でヴァイオレットに殴られたぞ)」
「ん?おかしいですね……その時の詳しい状況は?」
「あうんいうあえおうらっあ(多分キスされそうだった)」
「ツンデレの必要な対処?ということでは?」
え、そんなんあり?
(くっ、操れるのがこんな小者だけとは)
ん?なにか聞こえたな。これがギギか?
ねぇねぇどんな気持ち?操れるやつがこんな弱い駒しかいないのどんな気持ちぃ?
(自分で言っといて悲しくならないっすか?)
……うん。




