賭けをしませんか?
爺様たちを助けてやりたいけど、素直に言うのはなんか恥ずかしいな。
どうしたもんかと空を見上げた俺の目に、二つの満月が映った。
ああ、だから今夜はかなり明るかったのか。
まあこの世界の月って欠けてても相当明るいんだけどな…………欠け、賭け?
「爺様、賭けをしませんか?」
「賭け、じゃと?」
突然そんなこと言い出されて、爺様は俺を不審そうに見てくる。
ダンジョンマスター10人に妖精の剣を加えたらまずボロ負けすることは無いだろう。
「俺たちが、ガガを倒せるかどうかですよ」
「はあ、何を言っとるんじゃ。さっきも言ったじゃろう。この世の達人をかき集めるようなことをせん限り…………なんじゃ!?」
ため息をついて俺を諭すように言ってきた爺様の言葉を遮るように遠くの方で爆発音が轟く。
『来たっすね』
しばらく待つと、音のした方向から騒がしい集団がやってきた。
「ユースケー!探したわよ」
「ユースケ様、ご無事ですか!?」
ヴァイオレットとソランが俺を見つけてものすごいスピードで駆け寄ってきた。
「待ってたぞお前ら…………さっきの爆発何?」
「そう!この森おかしいよ!見たこともない黒いブヨブヨしたモンスターがいるの」
「!?お嬢さん、そのモンスターはどうなった!?」
「ソランが聖属性の攻撃したらキャンキャン言って逃げていったわよ」
さすがソラン、さすソラだ。
「ユースケ様、この地には妙な結界がありました。我らのような強者には通じませんが、あなたには効果があるはずです。お気を付けください」
ん?いま丁寧な言葉でディスられた?
「せ、聖属性!?それにこの者たちのただならぬ気配……お主一体何者なんじゃ?」
俺は酷く狼狽している爺様を落ち着かせてもう一度問う。
「俺が何者でもいいじゃないですか。爺様、この世で最高クラスの達人集団と最高の聖武器。これでガガを倒せるか賭けませんか?」
今度は爺様はため息をつかず、俺とソランたちを見つめて一言。
「話を聞こう」
と言った。




