リカヤ
「すっげー!お兄ちゃんって王様なんだな」
「まあな」
俺がエスリメについて話し始めたところで少年は驚いたようにそういった。
王様やってるって言っても、実際に仕事してんのはもう一人の俺なんだけどな。
「王様ってのは里長みたいなもんだろ?若いのにすごいなぁ」
俺がこの世界で見てきたことを、キラキラした目で熱心に聞く彼はとても楽しそうだった。
俺はそんな彼を眺めながら、ずっと一つのことを考えていた。
この子の種族何?
サラマンダーみたいなの赤みがかった肌なのに、ウンディーネと同じ首にエラがある。
さらに、ライオンみたいな鬣が生えている。
混血なのか?鬣のある種族は見たことないなぁ。
『俺もこんな妖精族初めてみました』
盾も知らないってことは相当な希少種なのだろうか?
「君の里の人ってどんな種族がいるんだい?」
「種族?分かんないけど皆僕と同じだと思う」
自分の種族の名前はわからないってことか?てか、全員同じってことは混血ではないってことか。
『今時新種すか?謎が深まりますねぇ』
確かにこの世界の人類の歴史は深いみたいだし、混血でもないのに新種発見てのはビッグニュースだろう。
「君、名前は?」
「リカヤ」
「リカヤはどうして外に憧れてるんだ?自分で行ってみようとは思わないのか?」
少しでもここの結界の情報を得るためにリカヤに質問する。
リカヤは少し悲しそうに俯きながらポツリポツリと話し始めた。
「僕だって外に出たいさ。でも、爺様たちが我々にはやらねばならぬことがある。結界の外に出ることは許さないって」
『やらねばならぬこと?』
リカヤは結界のこと知ってるのか。
彼の種族にはなにか特別な仕事があるのだろうか?その仕事又は彼ら自身を知られないために外に出てはいけない、もしかするとこの結界はリカヤたちを見つけられないために作られている?
あれ?もしかして俺、勝手に迷い込んできて被害受けたー!って騒いでただけか?
「そのやらね……」
「そうだ!お兄ちゃん知ってる?僕、火を起こせるんだぜ」
俺が、リカヤたちのやらねばならぬことを聞こうとするのを遮り彼は落ちてる枝を拾い、木に登り葉を毟った。
葉に石を叩きつけると火が燃え上がる。
『火葉すね。衝撃を与えると発火する植物っす』
「な?凄いだろ。火に魚や肉を当てると美味しくなるんだぜ。それを焼くって言うんだって」
見てて、と言いながらリカヤは湖に潜り魚を五、六匹捕まえてきた。
ウンディーネ顔負けの泳ぎだ。
 




