結界内に潜むもの
メモ失くしちゃって雄亮が異世界に来てどれくらいの時間が経ったか分からなくなっちゃった。
読み直さないといけないなぁ。
「なー盾、遭難した時って動いちゃいけない気がするんだけど?」
『それは普通に遭難した時っすよ。結界に囚われた時は相手に居場所を掴まれないために常に動き回るのが定石です』
しかしなー、普通に怖いんだよこの森。
明らかになにか出てきそうだ。
いや、オバケなんて信じてないぞ。レイス系モンスターとか普通のモンスターが出てくるかも。
「待ってたらヴァイオレットたちが助けに来てくれるよ」
『もしご主人の夢遊病もどきが、結界におびき寄せる術の類だとすると、術にかかってないヴァイオレットさんたちは気づかない可能性がありますね。朝までここで待つつもりっすか?』
「…………気晴らしも兼ねて歩くか」
『とりあえず気配隠蔽の魔法を……これでいいっすよ。まあ、この規模の結界を作れるやつに対してどこまで通じるかわからないっすけど』
不気味な森を盾とひたすら雑談しながら歩く。
帰ろうとしていた先ほどとは異なり、見えない敵に対する緊張で足が震えるため、盾にもう少し早く歩いてほしいと言われた。
ビビリな俺に対するあまりな物言いに逆ギレしそうになったその時。
GYAAOOOOOOOーーーーーーーーーー!
「……………………」
『…………』
遠くの方から正体不明の雄叫びが聞こえた。
かなり離れているはずなのに、腹の底が振動を感じるくらいの衝撃を与えてくる雄叫びだ。
「やばいって!あの声!出会ったら死系のモンスターの声だよ!」
『ご主人静かに!そんな大声で話すと気づかれますよ!……あっ!こっちに向かってくる』
「嫌ゃぁーーーーー!」
アダマンタイト装備を俺の体の筋という筋が千切れるくらいフル稼働させて逃げたが、十分もしないうちに雄叫びの主に追い付かれてしまった。




