スナイパーゴーレム
「ニアラ、今日は新型のお披露目と聞いたんだが、肝心のゴーレムはどこにあるんだ?」
新型ができたからと、仕事を中断させられてまで軍事演習用の平原へ連れてこられた俺がニアラに聞くと、彼女はフッフッフと自信気に笑いながら、遠くにある机の上に置かれた空き缶を指さした。
「ユースケさん。あれをご覧下さい!」
「空き缶だな」
バシュッ!
カランカランコロン。
「んぁ!?」
どこからか飛来した極小の魔力弾が空き缶を打ち飛ばした。
ゴーレムは目に見える距離には居ない。一瞬魔力弾の軌跡が見えたが、斜め上から飛んできてた。
高所からの狙撃か?
「空高く飛んで狙撃してくるゴーレムか?」
「飛行型は現在開発中です。ゴーレムはあそこです」
ニアラが示したのは、遠く離れた山岳演習用の山脈。
嘘だろ……100kmは離れているぞあそこ。
ゴーレムによる精密射撃……。
「変態の成果だな」
「これが完全狙撃型のゴーレム、スナイパーゴーレムです。発射の反動に耐えられるだけの最低限の強度は持たせた以外の重たいだけの装甲は全て外し、その軽くなった分、長距離の魔力減衰に耐えられる高密度の魔力弾の為の魔力タンクを増設。そして手先の精密性を上げました。あ、狙撃のデータは助手君に取って頂きました」
…………あの助手ダンジョンマスター、当たるまで100km狙撃やらされたってことかよ。鬼だなニアラ。
「今は世界各地を飛んで、それぞれの環境や地形によって変わる風や空気のデータを採取してもらってます」
いつもバカバカ言ってスマン。お前はすげえやつだよ助手。
「斬られた私怨混ざってないか、ニアラさん?」
「いいえ」
素晴らしい輝きを放つ笑顔で否定された。
これは深く追求してはいけないな。
助手に黙祷!
同じ反動でも、ランページゴーレムは高出力で、スナイパーゴーレムはヒョロガリで反動を受けやすい。
スナイパーゴーレムがどれだけヒョロガリかと言うと、殆どフレームの状態で魔力タンクを背負っている。




