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小石って蹴飛ばしても案外気づかないよね

「どうなっているんだ!」


 ダンッ!と大勢が円卓を囲んで座っている中、一人の男が立ち上がって円卓を叩いた。

 他の座っている者たちは、苦虫を噛み潰したような顔をしたり、こめかみに指を当ててうなだれていたり、無関心を装ったりと表情や態度は様々だが、男を恐れていないという点は共通していた。


 対照に彼らより位の低いと思われる、円卓の後ろに立っている者たちは一様に男の剣幕に怯え震えていた。


「ブライシュクのスタンピードの大規模化を指揮していたのは誰だ!?」


「大口叩いていた新人だな。あれ以来行方は分からん」


「どうしてそんな得体のしれない奴に任せた!」


「だってあの坊やの実力は確かだったもの。それに坊やに一任すると決めたのはこの会議でしょう?」


「ぬぅぅ」


「何がぬぅぅだよ。何だったらお前が裏で支援していた海賊団が丸ごと吸収された件について追求しとくか?」


 バカにされたように青年にそう言われ、男はなぜそれを!?と言いたげな顔をしつつも、このピンチをどう切り抜けるか思案する。

 出た結論はシンプル。仲間を増やす。


「お、俺の失敗が言われるんならこいつのはどうなんだ!損害で言えば俺の何十倍も出てるぞ!」


 男に指さされた肥満の女はつばを撒き散らしながらヒステリー気味に弁明する。


「あ、あんなのどうやって対処するザマス!エスリメのテレポートゲートなんてもの使われたら輸送費は殆どタダザマスよ!?」


 女はこの世界で五本の指に入る豪商だ。世界各地に支店があり、女の商会では手に入らないものは無いと言われ、各地の特産品を高額な輸送費を上乗せして売っていたが、エスリメの、いやスライムダンジョンの出現によって世界の物流は大きく変化し、今までの様な商売は通用しなくなった。


 しかし、未だに赤字になっていない点は女の才覚によるものだ。

 普通に失敗して損害を被っただけの男に追求されるいわれはない。


「確かにあの国厄介だよね。てか、今話してたの全部エスリメのせいだし」


「潰そうにも戦争仕掛けさせた国を反撃どころか吸収してくるもんな。スライムだけに」


「うまいが状況的にはまずい。だが、それだけエスリメも我らを警戒しているということだ」


「しばらくは噛みつかずに力を蓄えるしかないんじゃないかしら?金も力も遠く及ばない」


「だが、放置しているとあの国はどんどんでかくなるぞ!どうするんだ!?」


「今まで思想は同じだけでスタンドプレイだった俺たちも一致団結する時が来たってことじゃないかな?」


「だとしたら先ず、組織のガンを取り除かなきゃな。喚くことしか能がなく、あまつさえ()()の足を引っ張ろうとするガンを」


「な、…………かひゅっ」


 組織のガンとされた男の首ははねられた。後ろに立っていた愛娘であり部下だった者に。


「おっ?思い切りいいね」


「父は一戦士としては優秀でしたが将としての才能はなかった。それだけです」


「……気に入った。皆、彼女が奴の後釜でいいな?」


 答えは全員からの拍手だった。

 女は父の遺体を椅子から蹴落とし、今までもそうだったかの様に当たり前に自然に座った。


「とりあえず、どう協力するかは一旦持ち帰ってから後日、各自で案を出し合おう。次までに考えといてくれ。くれぐれもエスリメに単独で手を出すなよ。以上」


 全ては大鷲の空のために。


 斉唱の後、その場は解散となった。

孔明はともかく雄亮は一度耳にしただけでもう覚えてないぞ。頑張れ大鷲!

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