とある捕虜の兵士
良いお年を〜。
来年は更新頻度上げたいな。
「なあ、あの部屋なんだったんだろうな?」
俺は同室の仲間にそう聞いた。
エスリメとの戦争で捕虜となった俺たちは、しばらくの間留置場へ入れられていたが、今日収容所へ護送された。
収容所へ送られるまでの期間から考えて、エスリメは俺たちの扱いをかなり慎重に検討したのではないたろうか。
国も俺たちの為に動いてくれているはずだ。一刻も早く国に帰りたい。
「さあな。一人一人部屋に入れられて中心でしばらく座らされてたのに意味があるのか?…………あ、写真とか言う絵を描いてたんじゃねえか?」
「でもそれって捕まった直後に描かれてただろ?わざわざまた描くのか?」
このエスリメという国は何もかも意味が分からないとにかく奇妙な国だ。捕虜にめちゃ美味い飯出してくれるし、虐待もない。
一体何がしたいのかわからない所が不気味さを増してくる。
「おっ、飯だ飯だ…………うわっ!」
看守が持ってきた飯を受け取った仲間がトレイごと落としてしまった。
「どうした?」
「いや、ナイフが…………あ、どうも」
看守が落ちた飯を片付けて新しいのと交換してくれた。なんでそんなに親切なの?
「うっ」
「どした?」
看守の腰の剣を見た瞬間息がつまり、膝を付いてしまった。
何だこの感覚は……初めて剣を握った頃に戻ったようだ。
剣が恐ろしい。こんな危険な物を持っていいのだろうかと不安で頭が一杯になってしまう。
看守が出ていくと恐怖心は収まっていった。今回の戦争でトラウマにでもなったのだろうか。
「大丈夫。収まった」
何人かの仲間がナイフをトレイの隅に置いて恐る恐る飯を食い終わると、次は自由時間だと中庭に連れてこられた。
「お?新入りか。よく来たな」
「どうも。あの……俺たちって捕虜ですよね?」
「俺たちはエスリメで犯罪をしようとして捕まったから捕虜ってわけじゃねえが、お前さんらは捕虜だって聞いてるぞ」
え?ここって刑務所兼ねてるの?こいつら危ない奴らじゃねえよな?
「まったく、食い逃げしようと考えたらその瞬間指輪からゴーレムが出てくるんだもんなぁ」
あ、よかった。しょうもない。そうだよな。凶悪なやつをこんな自由にはしないか。
しょうもなくてもここの先輩。色々聞いてみるか。
「あの、先輩らは普段どんな労働をしてるんですか?」
「労働?そんなもん無ぇよ。ここでは好きなだけ食って、寝て、たまにここで体動かして遊ぶ。ほら、あそこの奴らはドッジボールをしてるだろ?」
「どっじぼーる?」
「エスリメの遊びさ。後で教えてやる」
「はあ、どうも」
どういうことだ?捕虜とか犯罪者には普通、労働させるだろ?
この収容所快適すぎるだろ。まともに働いてる奴らが馬鹿みたいじゃないか。
「あっちのバーでいくらでも酒飲めるぞ」
「はぁ!?」
飲ませちゃ駄目だろ。何だここは?リゾートか?
「どうなってるんだ?」
「さあ、でも遊べるんなら捕虜返還まで遊ばせてもらおうぜ」
何でこいつこんなに楽観的なの……。
三時間後。
酒うめぇ~。ドッジボール楽しえぇー。
俺ずっとここに住む!
「ふっふっふ、堕落しろ堕落しろ。そして国に帰った時には働けなくなってしまえー」
「捕虜ニート化計画…………IQ低い策略ですね。雇った冒険者たちが存分に怠けの見本を見せて捕虜の堕落を加速させている」
罪人役の冒険者たちも外に出れないからただ酒を満喫している。あれ演技じゃないだろ。
「労働意欲無くして税収減ってしまえー」
「雄亮さん、頭悪そうな顔で言わないでください」
それ普通に悪口だよ孔明!?
武器恐怖症は、人によって武器の定義が違うので効き目に個人差があります。
例えば本編のようにナイフが武器だと思ってる人はナイフを恐れます。
格闘家が催眠術に掛かってしまえば、手が恐ろしくなります。日常生活が超不便。
今回の話に出た捕虜は、武器の定義が狭いので日常生活に支障はありません。捕虜たちの中では割と恐怖症が軽い方。




