ヤキトリの成長
「人化はドラドラとヤキトリもできるのか?」
「勿論でございます」
後ろから聞こえた野太い声にギョッとして振り返ると、赤髪の厳つい筋骨隆々の男が跪いていた。
「どちら様で?」
「ヤキちゃんよぉ」
「はぁ!?ヤキトリなのぉ!?」
「はっ、拙者フェニックスのヤキトリで御座います」
うっわー、似合わねえ名前。適当に名付けて本当に申し訳ねえ。
拙者って一人称で武人みたいな雰囲気なのに名前はヤキトリかぁ。
「ヤキトリ、久し振りだなぁ。元気にしてたか?」
「主君の誇れるダンジョンモンスターとなる為日々鍛錬を重ねております。先日、マスターソード様より免許皆伝を頂きました」
へぇー、マスターソードがもう教えることはなにもないってことか。
しかし、ヤキトリはフェニックスになったら剣を持つ手は無いはずだが、一体どうなって戦うんだ?
「良ければ少し見せてくれ。剣はこれでいいか?」
「主君の剣を貸していただけるとは光栄の至。では」
ヤキトリはフェニックスの姿になると、爪で剣を掴んだ。
あー、そうやって持つのか。片脚で持ってるからバランスが崩れないか心配だったが、安定して飛んでいる。
『ご覧あれ』
ヤキトリは自身が纏っていた炎を剣に乗り移らせ、数倍に伸びた剣を逆手に持ち替え、空高く飛び上がり急降下してプールの水を真っ二つに割った。
モーセが海割ってる絵みたい。
「あらすごい」
「流石はマスターソードの技を受け継いだLランクモンスターってとこか」
なんだろうこの感覚。親戚の子が久し振りに会ったら自分よりも優秀になってる感じ?しょんぼりする。
『如何でしたかな?主君』
「お?おお!すごいな!この調子で頑張ってくれ」
『はっ!』
ちょっと前まで可愛い雛だったのになー。




