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こんな爺さんになりたい

「儂がどちらかを次期皇帝に指名しても、指名されない側の不満が溜まり、血を見ることになる。かと言って指名しなければそれはそれで血を見るじゃろう」


「でも普通長子が継ぐものじゃないんですか?どうして皇女の後ろに貴族が付くんです」


「普通は長子が継ぐ。しかし、皇女の方は皇太子が死ぬ前から民に奉仕活動をしていて人気が凄まじいんじゃ。皇子の方は政治に関しては優秀じゃから甲乙つけがたい。皇女に貴族が付くのは、皇子の味方をしても見返りが期待できん貴族たちじゃな」


 途中孫自慢みたいになってたが、なるほど。政治と民からの人気、どちらも上に立つ者としては重要な力だ。


「でも帝国の政治って結局貴族の物でしょう?……だから民からの人気だけの皇女は分が悪いってことか」


「うむ、それに皇子の支援をしている貴族は悪知恵の働く輩が多いから平民はいつでも皇子側にすることは出来るじゃろ」


 嘘の噂でも撒いて皇女の人気を落とすか、皇子の人気を上げるか。どうとでもやり方はあるか。

 帝国もなかなかきな臭い状況なんだな。


「そもそもお孫さんたちの仲はどうなんですか?」


「仲は良い。じゃが皇子は合理的と言うのか、皇女を切り捨てたほうが国の為になると判断すれば迷わず切り捨てるじゃろうな」


 大事な物のために大切な者を切り捨てられる人間か。悪いとは言わないが俺は理解できないな。


 王としてそれはよろしくないと言われるかもしれないが、俺はどちらも捨てたくない。

 どうしてもどちらか捨てなければならないとしたら、どちらも選ばず全てパーにするかもな。


 流石にこの考えは王失格か。

 …………そうか。皇帝は国と孫どちらも選ぼうとしているのか。


「事情は分かりました。皇帝が危惧するような事態になれば、俺が全力で皇女を助けましょう。エスリメの名にかけて」


「かっかっか。国の名前をかけてもらえるとは、安心して死ねるわい」


 快活に笑いながら皇帝はそう言った。

 なぜかは分からないが、年を取るならこんな爺さんになってみたいと思った。

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