クロノ皇帝の頼み
「こんなに遅く行ってもいいんですかね?」
「ええんじゃよ。エスリメは此度の立役者じゃ。早く着いたら他の者たちがばつが悪くなる。ほら、よく言うじゃろ。主役は遅れてやってくるとな」
想定外の事態はあったものの、当初の目的であったモンスターの退治を成功させた俺たちは、ブライシュクの砦へと向かっていた。
本来は、戦う前に各国の軍を率いる者たちが軍議として顔を合わせる予定があったが、全軍突っ走ったせいで今からになってしまったのだ。
ジヨとラッシュンの人たちは先に向かって、一時間程遅れて俺たちは出発した。その理由は、クロノ皇帝が言ったとおりだ。
「皇帝、今回は呼んでくれてありがとうございました。おかげで友好国が増えそうです」
「ダンジョンマスターが国王の国はどうしても警戒されてしまうからのう。実際合ってみれば気の良い者たちだと分かるが、ユースケ殿は国にこもってしまってるから謎の王という雰囲気があるんじゃ。まあ要は積極的に外に出ることが重要ということじゃの。今回、儂はきっかけを作っただけに過ぎんし、前にも言ったように兵の損失を抑えるためじゃから気にせんでええよ」
笑いながらそう言ってくれたクロノ皇帝だが、同時に何か頼み事をしたそうな顔をした。
「ですが、実際エスリメにとって助けになったわけなんで、何かお礼できることはありませんか?」
恩は返さないと、時間が経つにつれてどんどん大きくなっていくから早く、できればその場で返せと孔明に言われた。
クロノ皇帝が誘ってくれなかったら、今の同盟国以外と有効的に接触できる機会はまだしばらくは来なかっただろう。
「そうか?では一つだけ、儂が死んだあと、孫娘を守って欲しいんじゃ」
クロノ皇帝には息子が一人居た。
皇太子だった彼には子供が二人、兄と妹が居て皇帝は孫である二人のことを痛く可愛がっていたそうだ。
皇太子が皇帝になって、孫たちも大きくなり妹は何処かに嫁ぎ次の帝位継承権を持つものは兄だけになるはずだった。
しかし、皇太子が事故で亡くなってしまい、帝位継承権が兄と妹の同格の二人に渡ってしまった。
すると、帝国貴族たちが続々と派閥に分かれ二人を擁立して権力争いを始めたのだ。




