犯人と先輩
「くそっ、何だありゃ、ゴーレム?冗談言うな。ありゃどう見てもロボットだろ」
森の中から、エスリメの新型ゴーレムがモンスターを蹂躪している光景を伺っている男がいた。
その服装はエスリメ風、いや地球風だ。
「せっかくモンスター共を強化したのにあんな火力で来られたらどうしようもないだろ。……こうなったら」
「首尾はどうなってる」
「あ、兄貴!?どうしてここに」
兄貴と呼ばれた男は氷のように冷ややかな表情で、焦っている男を見下ろした。
「お前の作戦の出来を見に来たのだ。で、どうなんだ?」
「し、心配いらない。これから奥の手を使うから。そしてエスリメのガキを殺してあいつに一泡吹かせてやる」
遠くの生き残ったモンスターに手をかざそうとする男の手を、兄貴がガシッと掴んで静止する。
「兄貴?」
「なるほど、僕に対する嫌がらせってことか」
男が兄貴の姿をじっくり見ると、その姿は男が一泡吹かせてやるはずの少年へと変わった。
「てめえ、縁ぃ!」
「ハハッ、気づくのが遅いねえ。初めまして兄さん。愚弟の縁でーす」
朗らかに笑って挨拶した縁は、ついでに手から電流を流して男を黒焦げにした。
「ぐはっ、こ、この野郎!」
男は縁に反撃、と思いきや先程のモンスターに手をかざして何かを送り込むと、そのまま力尽きた。
「あ」
男のまさかの行動に縁は一瞬フリーズしたが、すぐに元の飄々とした表情に戻った。
「流石腐っても新世代。僕の嫌がる事を完璧にしてくれたね」
「能力は超強化か。弱ってたときに使ったから威力もそこまで……うん!雄亮君たちで対応可能」
「兄さんのせいでまた一枠埋まっちゃったじゃないか。しばらく新世代の相手はできないな。ん?ああ、姉さん説明しといてよ。任務を放り出してきたから急いで戻らなくちゃ」
「ふふふ、こういうことしてくるんなら僕にも考えがあるよ」
一人でぶつぶつと喋りながら縁は空間を割いて居なくなった。




