置いてきぼり将軍
「おや?あれは」
ダルシメン首長が指差した方向には百人程の集団が移動していた。
「他の国は全て戦場に行ったんじゃ?」
「あれは……ラッシュンのユージーン将軍です。ラッシュンの鬼神という二つ名がある程の勇将で彼が総大将になった戦は負けた事がありません。確か、ラッシュンは今回二千が参加してたはずですが」
鬼神か……強そうでかっこいい二つ名だ。俺もなにかそういうのが欲しい。
「もうすぐ合流しそうですから話を聞いてみましょう」
数十分後、ユージーン将軍をバスに招いた。
「同行を許していただきありがとうございます。ラッシュンのユージーンと申します」
「エスリメの王、雄亮です。他のラッシュンの方々はどちらに?」
「お恥ずかしい話ですが……」
ユージーンは今回の援軍の総大将ではなく、あくまで将軍の補佐としてラッシュン王から任を与えられたらしい。
今回の援軍の総大将は若手らしく、王の親戚らしい。そこまで有能という訳でもない所謂コネ将軍だ。
それで王が心配してユージーンに陰で支えて欲しいと個人的にお願いしたそうだ。
しかし、若手総大将は王に重用されているユージーンを快く思っておらず、また、軍の幕僚たちも同様でユージーンを置いてきぼりにしてやろうと度々密談していたらしい。
ユージーンはその話を偶然聞いていたので、夜も本陣が動いていないか見張りを立てていたらしいが、気づいた時には見張りの一人が縛り上げられていて本陣も移動してしまったらしい。
それで慌てて彼は残された兵と自分の兵をまとめて、軍を追いかけていたそうだ。
「変な上司を持つと大変ですね。帰っちゃえばよかったのに」
「私を信頼してくださった陛下を裏切るわけにはいきませんから。それに、将軍は私の恩師のご子息なのです」
義理堅い人はそんな役回りをさせられるんだな。大変だ。




