コーリンの出世
「正確に言えば婚約者もですわ」
「…………」
彼女は一体何しに来たんだ?
「別に恨んでなんかいませんわ。父もあの男も、女を子を生むだけの生き物としてしか見ていなかったので。その点エスリメはどんな方でも等しく教育を受けることができ、性別関係なく職を選ぶことができて素晴らしいですわ!」
「そ、そりゃどーも。で、用は?」
「申し訳ありません。つい熱くなりましたわ。愛人を一人囲う気はありませんかしら?」
……これはどういう意味だ?
私が愛人になります!なのか誰かを愛人として差し出すなのか。
「その愛人とは…………コーリンさんなんですね」
俺が全て聞き終わる前に、コーリンはにっこり笑いながら自分を指さした。う、うん。いい笑顔だね。
「さっきと言ってること矛盾してない?」
「使うのと使われるのは違いますわ。私にも野心はありますの。そのためにはまず、虜囚という立場から抜け出す必要がありますわ」
虜囚と言うほど酷い扱いは、行動範囲制限してる時点でやってるか。
しかし、愛人になりますとはもの凄い覚悟だな。
「正妻になろうとは思わなかった?」
「御冗談を。私は一般人ですので」
どういうことだ?あー、ロメイアには勝てんってことか。
ロメイアが俺(外の)を好きなことはエスリメの誰もが知ってる。本人がインタビューに応じた記事を出してしまったからな。
考えが脱線している。今はコーリンの話だ。
「つまり、コーリンさんは出世したいから俺の愛人になると?」
「そうですわ」
隠さないんだな。正直なのは好感が持てるが出世のためだけに愛人になる必要は無い。
「じゃあ別の方法があるよ。コーリンさんは学はある?」
「貴族の花嫁として父が最低限の教育を受けさせてくれて、後は城の図書館で独学ですわ」
「書類仕事できる?」
「やったことはありませんが、よほど難しくなければ多分できると思いますわ」
できない事は無理にしなくてもいい……まあそこはやらせてみてから考えよう。
「了解。コーリンさん、付いてきて」
俺はいまいちさっきの話が分かってない顔のコーリンを連れて孔明の執務室へ行った。
「孔明、文官志望を連れてきた。お前の直属の部下な。彼女に合った仕事をさせてくれ」
「え?」
「…………雄亮さん、私一応彼女の先祖に酷いことされてるんですが」
「もう何年、何十、百か分からんけど、昔の話だろ?国王命令だ、水に流せ」
「はいはい。コーリンさん、あなたのデスクはここです。私の指導は厳しいですよ」
なんだかんだと孔明はしっかりとコーリンのために机を用意していた。
均に俺たちが来ることを言われてたんだろう。この執務室は孔明専用だからコーリンは、実質孔明の側近の扱いだ。
「これで俺の愛人にならなくても出世できるだろ。明日ここへの出入り許可を付けた指輪渡すから、そっちは借りたダンジョンマスターに返してくれ」
トントン拍子に話が進んで半ば放心状態のコーリンに行って俺は帰った。




