初期化メモリ
少し前からコアちゃんは思っていた。雄亮の周りには孔明やゴのように知恵を授けてくれる者や、マスターソードやソランのように戦で猛威を振るう者、ヴァイオレットやロメイアのように女性として雄亮を支えようとする者など多くの人材がいて役に立っている。
しかし、自分はどうだ。雄亮に与えられる情報には限りがあり、ましてや戦うなんてことはできっこない。彼の心臓を敵の目の前に持っていくようなものだ。
自分にできることと言えば、デスクワークの手伝いや子どもたちの世話くらい。それらも代わりの人材はいくらでもいる。
有事の際は破壊されないよう大切にダンジョンの奥深くで守られるだけの存在。
「それで僕に新たなアップデートメモリを作って欲しいと」
「はい。私はもっとマスターの役に立ちたいのです!」
「主人の役に立ちたいと思うような設計なんてしていないのに、ましてや感情なんて再現不可能な物入れてもないのに、コアちゃん、君は君自身の力で人工物の限界を突破したのか。素晴らしい!………………とでも言うとおもったか?」
縁が指を鳴らすと、四人以外の人々たちは時が止まったかのように動かなくなった。
いや、時計やボールの動きも止まっているから実際に止めたのだろう。
「失敗だな」
体の芯から冷えそうなほど感情の無い声で縁は呟いた。
「縁様、私は」
「設計に入れてない感情なんて余計な物を勝手に身につけるなんて……バグは直さないとね」
そう言いながら縁はコアちゃんの腕を掴み、ポケットからUSBメモリを取り出した。
「これは君の初期化メモリ。雄亮君には悪いけど君を初期化させてもらうよ」
「い、嫌です!この想いを消したくありません」
コアちゃんは腕を振りほどこうともがくが、縁から逃れることなどできるはずもなく、USBメモリはコアちゃんの腕に挿されてしまった。
「製作者に反抗するなんて重症だなー」
「いや、嫌ぁー!」




