救出作戦成功
「よーし、街には誰もいないな。撃て!」
グダムの街は俺の一言で壊滅した。
街から避難した住民たちはそれを呆然と見ている。その中から少年が一人俺のことを睨みつけている。
「どうして僕たちにこんな酷いことをするんだよ!」
大人たちはどうしてか分かっているから何も言わず悔しそうにしていたが、子供は知らないからなー。
彼にとって見れば俺は、何もして無いのに自分の街を焼いた極悪人だろう。
まあ、理由があっても無くても家焼かれたら誰でも怒るか。
「この街を焼いた理由か……それはな、お父さんとお母さんに聞いてごらん」
どんな説明をするのか興味深い。
お父さんとお母さんが同じ街に住んでいた人たちを奴隷にしたからだよって、素直に答えれるかな?
子供たちは大人たちの非道によって今の境遇になってることを知ったらどう思うだろう。
しばらく燃える街を眺めているとスマホが鳴った。
「老師?救出作戦はどうなった?」
『大成功ですじゃ。数名の兵に見つかりはしましたがすぐに制圧してハイドゴーレムと共に脱出しましたわい。今名簿と照らし合わしましたが誰一人欠けておりませんぞ』
重畳重畳。ハイドゴーレムも問題無かったみたいだし完璧だ。
「よし、とりあえず引き上げるぞ」
俺たちはエスリメへと引き上げ、ゴーレムと兵士たちは国境閉鎖のために各地へと散っていった。
グダムは件の国の中で三番目に大きな街だ。そこにある物資が全て灰になり、ただでさえ普段から食料自給率が低く、輸入に頼っている所でエスリメが国境ギリギリで包囲して商人から輸入品を向こうの言い値で買取、物資が何も入ってこなくさせている。
包囲するために国境の国々に兵士を送る許可は得ているので余計なトラブルは起きないようになっている。
今頃敵国に裏で孔明が降伏するなら相場の十倍で売ってやると交渉しているはずだ。
グダムの街だけではなく多くの国民を見捨てるか、財政を破綻させるか、どちらにしろあの国はお終いだ。




