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ガエル

 吾輩は赤ん坊である。名前はまだ無い。…………嘘だ。名前はある。僕の今生の名はガエル。

 そう。今生と言うからには前世がある。僕は日本で生まれ育った記憶があるのだ。


 死んだ記憶が無いのが気掛かりだが、こうして赤ん坊になっているということは事実なので今回の生も精一杯生きようと思う。


 と思っていたら生後数ヶ月で、親が海賊に売り飛ばしてしまった。どうやら海賊として育てられるらしい。

 今生は即犯罪者デビューをかますのかと赤ん坊なのに人生諦めムードだった所を父上殿が助けてくださったのだ。


 最初は冒険者かと思っていたのだが、何と父上殿はダンジョンマスターで国王でもある立派なお人だった。


 父上殿は僕と共に捕えられていた赤ん坊たちを救い出してくれた上に養子として育ててくれている。


 父上殿はまだ独身であるのに、十分過ぎる程の愛情を僕たちに注いでくれるのだ。

 お仕事で忙しい日もちゃんと顔を見せてあやしてから家を出ていく。僕はそんな父上殿を心から尊敬している。


 父上殿が仕事で手を離せないときは色んな人が僕たちの世話をしてくれる。

 海賊時代から優しかったギランおじさん、父上殿の一番の相棒のコアちゃん、美女揃いのヒューマンスライムお姉さんたち、父上殿の友人の均だ。


 ギランおじさんや均はともかく、ヒューマンスライムやコアちゃんに下の世話をしてもらうのは赤ん坊ながら気恥ずかしく思った。


 均は僕や義弟妹を見て意味深に微笑むことが度々ある。ちょっと気持ち悪い。

 そもそも彼がここに来る理由は王の子の世話という名目で本来の自分の仕事をサボるためだ。


 全くけしからん。僕が父上殿の代わりにどついておいた。本人は、キョトンとしていたが。

 ああ、僕も早く大きくなって父上殿のお仕事を手伝いたい。


 そのために以前から父上殿が政治関係の本を読もうとするときは、膝の上に乗って一緒に読んで勉強している。


「たっだいまー!元気だったかい俺の可愛いベイビーズ」


「あー」


「おあえりー」


 父上殿がいつにも増して甘ったるい声で義弟妹たちを抱きしめている。一人一人ギュッとして最後に僕のことを抱き上げた。


「パパなー、これから何日かは帰ってこれないんだー。だからよー、ガエル、お前が弟と妹を守るんだぞー。なんたって一番上のお兄ちゃんなんだから」


 任せてください父上殿、そのお役目きっちり果たしてみせます。

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