上位世界での事件
「そんなぁ……」
それじゃあ生きてたとしたら地獄みたいなものじゃないか。
まだって先輩は言ってたから、崩壊した世界の復元を試みたことはあるのだろう。だができない。先輩ですらできないなんてほぼ不可能と言ってるようなもんだ。
「まあ、世界の不具合ってのはよっぽどの事がない限り発生しない。事実、何十億年もそんなもの起きなかった。仕事が無かったから暇な放浪者たちは、異世界の人々と交流して知見を深めていった。そんな事したら事象の邪魔になるって思ったでしょ?創造者もそこは考えていて、放浪者の本能は世界を傷つけないように作られていたから、彼らの行動で事象が邪魔されるような事は起きなかった。しかし、上位世界で問題が起きた」
そこまで言って先輩はコップに入っていた茶をゴクンと一気に飲み干した。
本能的に世界を傷つけないようにってどういうことだ?その世界で重要そうな人や物から離れたくなるのだろうか?
「まだ先輩は出てこないんですか?」
「当たり前でしょ!僕は君の一個上の学年だよ?忘れてたの?」
てっきり年齢詐称でもして学校にいると思ってた。よく考えてみればそんな事する意味ないな。
先輩が本当に高2ってことは、放浪者や新世代の中ではかなり若い方何じゃないか?
「エニシさん、そんなことより、上位世界で起きた問題とは何なのですか?」
「簡単に言うと、犯罪者が出たらしい。犯人を捕らえて罰として世界を作る能力を没収した所までは良かったんだけど、上の人たちは基本、善人思考でどうにもその辺りの警戒がザルだったんだ。しょうもない犯罪だった事もあって開放された奴は逆ギレして、この世界に入り込んでしまったそうだよ」
「何で逆ギレしたらこの世界に入ってくるんですか」
「自分が世界を作る力を取られた直後に創造者ちゃんが素晴らしい世界を作ったともてはやされたから逆恨みでかな。上だと良い出来の世界を作ることが日本で言う学歴みたいな扱いでステータスになるらしいから。上位世界だと奴は前科持ち無職学歴無しのようなもんだから、こっちの世界の支配者になってやろうとでも思ったんだろうね。上位世界の人間は作った世界に直接干渉する事は禁じられているから奴を追うこともできない。そこで創造者ちゃんに責任が回って放浪者を使って奴を捕らえなければいけなくなった」
上位世界って言うから、何か超越されたような完璧な世界を想像してたけど、案外俗っぽいんだな。




