ソランの権能
「あれ?…………防げたの?」
驚いていたのはニアラだけではなく、ヴァイオレットもだった。
その直後、死を恐れて目を瞑ってしまった己に気付き、ゴチンと額を叩いて再び冷静に矛を構える。
「ヴァイオレット殿」
「ソラン、挟み込む作戦じゃなかったかしら?」
ソランはヴァイオレットの隣に来て彼女の腕を引いて後方へ下がった。
「どうしたの?」
「二つ報告があります。一つ目はニアラの攻撃を防ぐことができた理由。二つ目はユースケ様からのオーダーです。まず、ヴァイオレット殿は私の権能をご存知ですよね。なので」
「知らないわ」
「……………………私の権能は『正直』。嘘をつくなどをして己を偽る者は私と対峙したとき幻覚を見ます」
「それと今なんの関係が?」
「この権能はまだ続きがあります。何者かに操られるなどで強制的に己を偽らされている場合は、能力が弱体化するのです」
ソランの言葉でヴァイオレットは先程、一人では耐えられないはずのニアラの光線を一人でも防げたことを思い出した。
「じゃあ、ニアラはいま何者かに操られているの!?」
ヴァイオレットの問にソランは深く頷く。
「おそらくは」
ソランの肯定に自分も頷き、ヴァイオレットはじっと目を凝らしてゴと格闘しているニアラを見た。
「洗脳魔法を掛けられている感じはしないわ」
「犯人に関してはエニシ様から、あの方の敵による洗脳だと説明を受けました。別の世界の未知の力によってニアラは操られているので我々では洗脳を解くことはできないと」
「なるほど。それでユースケからの頼みは何?」
ソランが俺の言葉通りにヴァイオレットへ伝えると、彼女は、あっと声を漏らした。
「あちゃー、それは不味いわね。て言うかその責任はあのピエロたちにあると思うのだけれど」
「それに関しては深く同意します。奴らが撤退した今、我々が一芝居うつしかないでしょう」




