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屁理屈で説き伏せる

「まあそういう事にしておくさ。ジェノルムさんが何を目的に来たのかは分かっている。ウォルテニアに関してだろ?」


「ああそうだ。ウォルテニアに通じるここを野放しにはできん」


「なぜ?」


 ジェノルムは俺の疑問形を予想していなくて一瞬言葉に詰まった。


「な、なぜって言われても……戦争が起きるだろう」


「え、何で戦争が起きたらだめなんだ?」


 我ながらクソみたいなセリフだな。


「そりゃ罪のない民間人が死ぬから……」


 ジェノルム、彼は善い人であるからこういうことは見逃せない。

 だったら屁理屈で見逃せれるように誘導するだけだ。


「この二人を覚えているか?」


 俺の後ろから出てきたのはヒューマンスライム。今は元の初心者狩りの二人の姿だ。


「Dランク冒険者のアルドとジェシカ、ここで行方不明になってたはずだが……」


「彼らはもう死んでいる。目の前に居るのは彼らを捕食させたヒューマンスライムだ」


 俺が合図するとぐにゃりと歪んで美女お姉さんモードの方の姿に戻った。

 ジェノルムはそれを見て目をくわっと開く。


「お前が殺したのか!」


「まあまあ。文句はこれを見て言ってくれよ」


 俺はジェノルムに袋を投げた。

 袋の中を見たジェノルムは驚きの声を上げる。


「これは!長年の行方不明で死亡扱いになった冒険者のギルドカード!」


「これは二人の所持品の中にあったものだ」


「⁉」


 ハッとした様子でジェノルムの中で点と点が繋がったらしい。


「ウォルテニアもこの二人と同じだ。放っておけば永久に被害者が増え続ける」


「しかし、ウォルテニアに続く道を放置すれば血みどろの戦いが起きる。ウォルテニアの民も、他の国の民にだって罪はない」


「ウォルテニアの民に罪がない?俺には強国に生まれた事にあぐらをかく怠惰な連中に見えるが?それにウォルテニアを討たないことで次の世代にウォルテニアの脅威を背負わせるのか?」


「それは、まあそうだが……」


 いい感じだ。ここで止めの言葉を言う。


「そもそも、なぜあんたが苦労しなければならない?見ず知らずの民の事をどうして心配する?」


 勝った。ジェノルムが、あれ?そういや何でこんなに頑張ってるの?って顔になってる。

 そしてちょっと思考が変わったタイミングでわかりやすい案を出す。


「まあ、あんたの言いたいことも分かる。正しいよ。じゃあ、こうしよう。他の国の軍隊が来たらテレポートゲートの機能は止める。ウォルテニアも俺のダンジョンの存在で他国との接し方を変えるかもしれない」


「ううむ」


「このダンジョン内では悪人は見逃さないけど、それ以外の人間は基本的に放置だから危険はほとんど無いし、ジェノルムさん的には冒険者ギルドに恩恵がある俺を殺さない方が得だと思うんだよねえ」


「ふむ、必要悪ってやつか」


「言葉の意味は違うけど、まあそんなものだな。そこでジェノルムさんやご相談が」


「お、おう。冒険者ギルドのギルマスなのに敵のはずのダンジョンマスターと相談ってなんか変な気分だな」


 こうして俺はジェノルムと年の離れたマブダチと呼べるくらいの関係になる為の一歩を踏み出した。

 いやー案外チョロくて助かった。

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