万剣の英雄と不落要塞
「ソラン様、ここは俺たちに任せてもらえないでしょうか!」
私の思考に介入してきたのは二人組の冒険者だった。
声の低さの割に小柄な銀髪の童顔の男と、全身鎧の大盾を持った巨漢。
「誰だこの二人は?」
「SSランク冒険者の万剣の英雄ベリルと同じくSSランクの不落要塞のノルンです。近い内にSSSに昇格すると言われています」
冒険者通のダンジョンマスターの一人が私に耳打ちしてきた。
「昨日のユースケ王様の俺たちへのもてなしにこころから感動しました!この戦ではぜひとも役に立ちたいと思っていたのです」
「ほう。素晴らしい動機だな。しかし、本当にそれだけか?」
「あ、あらら、見破られてましたか。実は一つ、俺たちがあのデクの棒を倒したら一つ願いを聞いて頂けないでしょうか?」
私には相手が嘘を言っているか見破る力がある。この男がユースケ様の役に立つこと以外に、何か別の目的があることはすぐに分かった。ユースケ様の役に立ちたいと思う心は、嘘ではないのは感心できる所だ。
「私にできることならば何でもしてやろう。しかし、SSランクが本当にたった二人でLランクのワールドトレントを倒せるのか?」
「図々しいのは百も承知ですが、あなた方が持っているアダマンタイト製の武器を貸してもらえませんか?そうすれば勝つ可能性がぐんと上がります」
武器を貸す?一体ベリルは何を企んでいるのだ?
「ソラン様、ベリル殿は己の武器を魔法で自由自在に動かして戦うのです。扱える武器の上限は万を超えるとか」
「何?それはまた凄まじい精神力と集中力だな」
武器を魔法で飛ばすこと自体は魔法を使える者ならば誰でもできる。
だが、自由自在に複数飛ばすとなると非凡な才能が必要となる。
私でも五、六本飛ばすのが限界だ。
ユースケ様が以前、チャリに乗りながらラジコンを何機も飛ばすようなもんだと例えていた。
それが万を超えるとなると、壮絶な修行でもしたのだと想像できる。




