ヴァイオレットの戦い
Sideヴァイオレット
ダンジョン産の妖精族の軍団と遭遇したあたしたちは、見事に足止めを食らっていた。
最初はヒューマンスライムとアダマンタイトゴーレム部隊でどうにかなるかと思ったけれど、予想以上に敵の勢いがあったからあたしたちが出ることになった。
そして現在、あたしは部隊を率いてクリスマスの時にサンタさんから貰った赤兎馬に跨り、ダンジョンバトル前にユースケから貰ったハルバード、彼の世界では戟と呼ばれていた武器を敵陣の中で振るっていた。
この戟はユースケの先輩さんが作ったもので、一切刃こぼれすることがなく、重量も使用者の思い通りでかなり扱いやすい。
「ヴァイオレット殿、その速度では他の味方が追いつけませんぞ」
後ろを走っていた老師に言われて後ろを見ると、確かに味方とあたしとの距離が開いていた。
今言うことじゃないけど、どうして老師は何にも乗ってないのにあたしの赤兎馬に追いつけるの?
「老師はついてこられるわね」
「僕たちも大丈夫でーす」
ジェイと他のダンジョンマスターたちはまだ行ける。
それなら。
「ダンジョンマスターたちで敵将を狙いに行くわ!ゴーレムはヒューマンスライムと冒険者たちを守りながら後退しなさい!」
後続の者たちにそう言い残してあたしを先頭に、鏃のような陣形で敵将めがけて敵陣を突き進む。
「来たな!ニアラ様の元へは行かせんぞ!」
「うるさい!この戟にかけてあたしは彼に勝利を届けるのよぉ!」
立ちふさがった敵将を乗っていた馬ごと切伏せて、あたしたちはそのまま敵の後方から抜け出してダンジョンの奥へと走り去った。
「老師、後退した冒険者たちにエスリメへ撤退するように伝えて」
「良いのですかな?」
「ダンジョンマスターが全員抜けられたのなら戦力として申し分ないわ。ニアラの所へ一番乗りしてユースケにいいとこ見せるのよ!」
「はい!指揮官がやられて敵が混乱している今がチャンスです。他の隊に遅れを取らないためにも急ぎましょう」
敵が統率を取り戻さないうちにあたしたちは馬に鞭を打ってダンジョンの奥へと向かった。




