エスリメ最強の男
「グアッ!」
ゴルドザーがマオに目にも止まらぬ速さで横腹を殴られて、うめき声を上げながら身体をよじらせた。
彼の頑丈そうな鱗がぽろぽろと剥がれ落ちている時点で、その威力はとんでもないものだとうかがえる。
マオにお前も続けとばかりにギロリと睨まれて俺は剣に魔力を込めて、ゴルドザーの鱗が剥がれたところめがけて投擲した。
俺の剣は魔力を込めて投げると、刺さった直後に手元に戻ってくる魔法の付いている剣で銘は忠剣だ。
忠剣はゴルドザーに刀身がすべて刺さり切って俺の手元に転移してきた。
マオが鱗を落としてくれなかったら、精々先端が鱗に刺さってたくらいって所だと思う。
忠剣にベッタリと付いた血を振り落として、俺はフライの魔法を使って上空でゴルドザーと睨み合っているマオの隣に行った。
「ナイス連携だ蓮。しかし、剣が刺さった直後に爆発する魔法を仕込んでいればなお良かったな」
「その手があったな。すまん、思ってたよりマオが強くなってて気が動転していた」
俺とマオが話している間ゴルドザーは、俺たちを見て冷や汗をかいていた。
爬虫類っぽい見た目なのに汗かくのか?ドラゴンって恒温動物だったのか。
どう見てもゴルドザーは焦ってるな。実力が拮抗していた最初の段階から変身して優位に立ったと思ったら、マオが自分よりも強く変身してしまった。
それに俺を加えてしまったら万が一にもマオを害することはできはしないだろう。
「マオ、その形態って何か制限はないのか?」
「この形態には特にない。元々余の内側にあった物を外に出しただけで、何も無茶なことはしていないからな」
角は無茶じゃないのか…………てかスライムダンジョンの第二迷路のボスはこいつだって聞いたんだが!……帰ったら仲間たちと相談しよう。もっと実力を伸ばさないと。
それとまたこいつ気になること言ったぞ。
「マオ。この形態にはって言ったよな?まだ変身できるのか?」
「ここからは多少消耗するが余は後三回変身を残している」
俺とマオの会話を聞いていたゴルドザーが涙目になっていた。
マオは第一形態の時点でマスターソードさんと渡り合ってたと聞いた。俺はエスリメ最強はマスターソードさんだと思ってたが、実はマオが一番強いのではないのだろうか。
「それじゃあさ、そこまで苦労せずにあいつ生け捕りにできるんじゃねえか?確か、敵のダンジョンマスターを配下にしたら、そのダンジョンマスターのモンスターも配下になるんだろ?」
「そういえば雄亮がそんなこと言っていたな。よし、やってみよう」
じりじりと俺とマオがにじりよるのを見て、涙目だったゴルドザーは目に決意が浮かんでいた。
「例え勝つことができなくても、ニアラ様の為に一矢報いてみせようぞぉ!」
そう言ってゴルドザーは死ぬ気で暴れ回ったが、マオには傷一つ与えることができずに十分後には人間形態で簀巻きにされてしまった。
そして俺はマオのようにはいかず、ゴルドザーの攻撃を食らいまくって、全身ボロボロで勇者覚醒の効果も切れてゼカイに背負われた。
「なかなか良いサポートだったぞ。蓮が居なかったら捕獲の発想も出ず、余も何発か貰っていたかもしれん。エスリメに戻って体を休めるといい」
「はははっ、そこまで評価してくれるなんて光栄だな。そんじゃ俺はあっちで応援してるぜ」
「うむ、ゼカイよ、蓮を頼むぞ」
「了解です」




