マオの第ニ形態
「かっこよく名乗りを上げたのはいいけど、勝利する為のプランはあるのか?」
「ある。蓮が勇者覚醒を使って、余が第ニ形態になれば良いのだ」
勇者覚醒とは俗に言う強化形態と言うやつで、それを使うと何か体がぼんやりと光り始めて三十分だけ能力が何十倍にも上がるチート技のことだ。
しかし、使った後半日は疲れで身動きが取れなくなる制限付き。だからもし使ったら、このダンジョンバトル中に俺が戦場に復帰することは無いだろう。
つまり勇者覚醒を使う時はここ一番の時で、マオはそれが今だと考えているようだ。
先程までのマオの戦いぶりを見るに、マオ隊の役目はエスリメの最高戦力の一人であるマオをダンジョンの奥へ送ることだ。
マオならゴルドザーは倒せないこともない相手だろう。しかし確実に消耗はさせられる。俺が全力でマオを援護しなければ。
「分かった……………ん?第二形態?マオって変身できたのか!?」
「雄亮が第二、三形態を持つことは魔王のマナーだと言ってな。確かにRPGの魔王はほとんど他形態を持っていた」
「じゃあ元々持ってなかったのに変身できるようになったってことか?」
「めっちゃ頑張った。余がこの世界に来て一番頑張ったと思う。どうだ。余もわきまえてるだろう?」
マオはドヤ顔でそう言った。
頑張っただけで第二形態になる事ができるものなのか……。
「第二形態なら戦闘スタイルはそこまで変わらないから連携も取れる」
「今までより早い動きだとイメージすればいいか?」
「うむ、刮目せよ!我が第二の姿を」
マオの変身と共に彼を中心にして魔力が爆発的に増加した。
魔力は普通は目に見えないのだが、密度が大きすぎて可視化するくらいの規模だった。
見た目も変化していて、髪が肩にかかるくらいまで伸びている。
そして何よりの変化は角だ。後頭部から腰にまで達する程の真っ赤な長い角が髪の間から生えていた。
「この角は体内の魔力を集中させるための器官だ。体外の魔力も吸収することができ、これにより余の魔法の規模と精度が上昇する」
今まで見たことのない角の生え方だが、実際に魔力が集中しているのだからマオの言う通りなのだろう。
これじゃあ俺の勇者覚醒を使っても、援護どころか邪魔にならないようにすることが精一杯かもな。
「確かにこれならいけそうだな。マオ、俺の制限時間は三十分だぞ」
「十分あれば事足りる」
俺が勇者覚醒すると、早速マオが動いた。
俺が認識できたのはマオが動いたということだけで、僅かにあいつが動いただろうと思われる軌道に角の赤い残像が残ってるだけだった。
ここまでの大幅な強化なら、俺の援護要らなくね?




