戦略級個人
「俺とマスターソードが魔法を使って敵に斬撃を飛ばします。砦の皆さんは我々の魔力が尽き、休んでいる間に弓で攻撃してください。我々の手勢と弓が苦手なものは打ち漏らして砦に近づいてきたモンスターの対処をしてもらいます」
妖精族の指揮官たちと作戦の確認をして全員が配置につくのを待つ。
「魔法で斬撃を強化した上で飛ばす。坊主は戦略兵器だな」
「素で斬撃飛ばせる化け物が何言ってんだよ。俺の鎧が合図を出すからその瞬間斬ろよ」
俺には剣が、マスターソードには鎧がそれぞれ魔法をかけてくれる。
鎧は攻撃系の魔法が苦手なので攻撃範囲を広げるだけで良いマスターソードを担当させた。
『いきます3、2、1、今です!』
鎧の合図と同時にマスターソードが砦の上から剣を大きく振ると、三日月型の斬撃が飛んでいって、敵のど真ん中に直撃した。
多分数百体は倒しただろう。
『ううむ、主よ。これは負けられませんな』
いやいや、何で戦略級個人に対抗しようと思ってんだよ。
俺はまだ素のスペックは人間の範疇だからな。
『魔法はかけ終わりましたぞ。いつでもどうぞ』
俺はマスターソードが狙った真ん中よりも手前に向けて剣を振るった。
マスターソードと同じように三日月型の斬撃が飛んでいき、何故か直撃した後に爆発が起きた。
は?なんの原理で爆発したんだ?
「おい」
『おお!やりましたぞ!昔の主が言っていたのです。こっちの方がかっこいいと』
完全に魔力の無駄遣いじゃねーか!
爆発で死んだモンスターは数匹しかいないぞ。
しかし、演出としては良かったのか砦の兵たちはまるで勝利したかのような鬨の声をあげた。
「戦略級の働きをする個人が二人、後の歴史家はこの戦いの真偽に頭を痛めるだろうな」
「だったらちゃんと映像として残してやるさ。それはそれで泡を吹くやつも出てくるだろうけどな」




