この国を守りたい
心配させやがって。
この僅かな時間で、シャクリーンたちの苦労が知れるな。
「待つのー」
「はーい」
ロメイアが呼び止めると、子供たちは素直に止まった。
遊びでも命令を聞かないといけないのか。カチンときて死ねとか言ったら大惨事だな。
「むう、みんな止まって面白くないの」
「自分が誰だか忘れたのか?」
「あ、ダーリン…………はっ!そういうこのなの!でも追いかけっこだから、つい言っちゃうの」
数百、もしかしたら数千年は生きているロメイアは子供よりも子供らしく無邪気に遊ぶ。
子供たちも、道行く妖精族たちもこの国では笑顔で溢れていた。
サラマンダーとウンディーネの子どもたちが手をつないで走り、シルフとドワーフの主婦が井戸端会議をしている。
見た目も文化も違うのにみんな笑顔でいるのだ。
これは俺がジョーカーがエスリメが目指す全種族共栄国家の一つの正解の形なのではないだろうかと、ふと思った。
ここに人族、魔族、獣人族が加われば俺たちの理想が完成する。
ならば、俺がするべきことは、俺がやりたいことは。
「ロメイア」
一つしかない。
「何なのダーリン?」
「妖精の剣と鎧をもらう代わりに俺はニアラとの戦いに協力すると約束した。けど、今は約束とか抜きに俺の意思で戦いたいと思う。この美しい国を俺の手で守りたい。そう思ったんだ」
損得じゃない。心の底からこの国の笑顔を守りたいという思いが湧き上がる。
この国は俺の命を懸けるだけの価値がある。そう感じた。
「やっぱりダーリンはサイコーなの」
高い声で笑うロメイアを肩に乗せて、俺は城に帰りヴァイオレットの帰りを待つのだった。




