仮面の下は
「平和だなぁ、ジョーカー」
「そうですねぇ、ボス」
馬車の上で俺とジョーカーは隣り合って仰向けになって空を見ていた。
「なあ、ジョーカー、今更なんだけどお前の顔って見たことないんだよなぁ」
「本当に今更ですね」
こいつが仮面を外したところを俺は見たことが無い。
食事の時もいつの間にか食べ終わってるし、温泉に入ってる時は付けっぱなしだ。
留金のような物も見えず、謎の力でくっついてるので、もはや呪いの仮面ではないのかと疑っている。
「それ外せないのか?」
「普通に外せますよ。魔法で自分にしか外せないようにしているだけです……外しましょうか?」
いざ外しましょうかと聞かれると、うんとは言いたくない。
こういうのはジョーカーが強敵と戦って激闘の末仮面が割れて覚醒するってのがいいんだよ。
こいつが覚醒するのかは知らないけど。
「いや、仮面の下は美男ってのがお約束だからな。がっかりしたくない」
「くくくっ、期待の斜め上を行くのが道化です。しかし、ボスの期待の斜め上は難しそうですからあまり期待しないで下さい」
「それでいいのかピエロよ」
俺とジョーカーがふざけた会話をしている間、御者台ではアキトとイーナがいちゃついていた。
「アキト、ぎゅー」
「あはは、イーナってばくっつき過ぎだよ」
俺の目の前では二人はある程度きっちりしているが、それ以外だとこんな甘ったるい声で話す。
あーあ゛。
「ジョーカー、俺上司とか部下とか恩とか関係なくお付き合いしたいよ。良い人いない?」
「ボス、誰に向かって聞いてるか考えてください」
そうだった。こいつ上司に対してはふざけた事するんだった。
「分かったぞ!さては男を紹介する気だな?」
「そこまではしませんよ。サキュバスクイーンを紹介しようと思っただけです」
「こいつ…………」
サキュバスクイーンとえちえちなことを男にしてくるサキュバスの頂点で、男はその姿を見ただけで気絶してしまうらしい。
その後は誰も知らない。多分色々吸われて死んでしまってるんだろう。
「俺じゃなかったら不敬罪だからなー」
「ははは、だから言ってるんですよ」
そう、ジョーカーは相手を見て嫌がらせをする。
例えば孔明や老師には一度もしたことがない。
主に俺とチースが被害者だ。
「本当会った時からお前はいい性格してるよな」
「くくく、お褒めに預かり光栄です」
「はいはい」




