勇者たち
「くそっ!」
蓮が大木を殴りつけると轟音を立てながら大木は吹き飛んだ。
王宮から出た勇者たちは人目のつかない森まで来て密会していた。
「蓮さん、そんな音立ててたら密会の意味無いですよ」
「分かってるよ!だけどよぉ、自分たちが召喚しておいて有効活用だと?化け物だと?ふざけんじゃねえよ!」
蓮は森に響くような大きな声で吠えた。
「だから大きな音立てないでくださいよ!」
「お前ら落ち着けよ。蓮、俺はお前の気持ちがお前以上にわかる。俺に免じて今は抑えろ」
誠司に諭されどかっと地面に腰を下ろして蓮はため息をついた。
蓮が切れて誠司が諌める、いつものパターンだ。
「くそっ、人質が居なければあんな奴ら」
「だから雄亮の誘いに乗ったんだろ」
これ以上意味のない愚痴を言い続けると二人に本気で怒られそうなので蓮は黙った。
「だけどダンジョンマスターの言うことなんて信用できるんですか?人類の敵なんですよね?」
「俺はあの糞共に復讐できるんなら誰の手でも取るさ」
「蓮と同じく。もう奴らの言いなりはたくさんだ」
誠司は召喚されて18年、蓮は6年もの間戦争の手伝いを無理やりやらされてきた。自ら敵を殺したこともある。
召喚されて1年半でまだ戦争にも行ったことのない光とは積み重ねた悔しさと憎しみの質が違うのだ。
「そうですか。先輩の蓮さんと誠司さんの言うことですし、人質もありますから僕は二人に協力しましょう。でもダンジョンマスターの味方だなんて……」
「ちっ、戦争を体験してもいない甘ちゃんが何言ってんだ」
「何なんですかその言い方は!」
「あ?やんのか?」
二人が互いの胸ぐらを掴んだその時だった。
「黙れ!」
珍しい誠司の怒鳴り声にビクッとなった二人は手を離して離れた。
「いいか、これが俺たちの自由になるための最初で最後のチャンスだ。俺たちは運命共同体。仲間内で争ってる暇はない」
「はい、すいませんでした。俺たちが協力しないとですよね」
「……すみません」
最後に当日の打ち合わせをして三人は王宮に戻った。




