戦争の知らせ
エルフの村に滞在して二週間ほどして俺たちは次の目的地へと出発した。
「近くにあるギルドは……サラマンダーの町ガレーか」
「サラマンダーの町は温泉で有名ですからね。楽しみです!」
俺が御者台で近くのスライムから情報を得ていると、ソフィアが馬車の横窓から顔を出して目をキラキラさせながら言ってきた。
これは一週間滞在コースだな。
まあ、急ぐ旅でもないから良いだろう。
「危ないから顔出すなよ」
「はーい」
馬車は自動だし周りにモンスターは居ない。へーわだなー。
馬車に揺られ温かい風を受けているうちに俺は眠くなってきた。
「ユースケ様、代わりましょう」
「ふああ、頼む」
ソランと交代して俺は自室に戻ってベッドに沈み込んだ。
□■□
「宣戦布告ぅ?」
ギルドの情報掲示板を見ると、神聖国ウォルテニアがエスリメに宣戦布告し、その日の内にダンジョンに侵攻してきたと書かれてあった。
きな臭いですとは聞いていたけれどどうしてこんな愚かな……。
「勇者とやらに余程自信があるようねもしかして勝機でもあるのかしら?」
「妖精の剣のようなものでもあるのか、或いはエスリメが国という形を取ったことで各国と協力して攻め込んで来るのではないかと危険視して先制攻撃でエスリメを潰すつもりなのか」
多分後者だと思う。エスリメは新興国家であまり力がないとでも思われたのではないのだろうか。
孔明が以前こういった事が起こりうると言っていた。
元勇者の孔明と均は神聖国にかなり詳しいからその対応策も既に作ってあるから大丈夫だろう。
「でも勇者って孔明さんと同格ですよね?ちょっと心配です」
「孔明曰く、あいつと均は勇者の中でも当たりの能力を持ってるから同格ってことはないだろう。今、神聖国に召喚されている勇者は三人だ。大丈夫、孔明ならなんとかするさ。本当にヤバくなったら連絡くれるだろう」
「標準で付いてる転移だけでも厄介では?」
「…………何とかなるだろう」
何とかみんなの前ではすまして言ってあるが正直不安だ。何事にもイレギュラーは存在する。
勇者たちが孔明が想定する以上に強かったら終わりだ。
俺はエスリメの勝利を祈る事しかできない。
もう一人の俺と仲間たちを信じよう。