気づかれないように帰国、したかった
エスリメへのテレポートゲートには入国審査場が作られていた。
審査場とは言ってもよほどの悪人じゃない限りは入れるみたいだ。
俺たちはメニューを操作してこっそりと入国審査をパスする。
「よし、入国完了。建国宣言は……ここでやるのか。なら」
俺は演説する俺のことが見やすい近くのビルの屋上のカフェに皆と向かった。
その道中、エスリメに来た人々がエスリメの物を珍しそうに眺めている姿を度々見かけた。
「ユースケ様、ユースケ様には会いに行かないんですか?」
「どーせ会ってもハッピーなことにはならないさ。あいつと次に会うのは合体する時だ」
カフェに着き見回すと、一人だけ男が座ってコーヒーを飲んでいた。そいつは見覚えのある男だ。
「孔明?」
「ああ、やはり来ましたね。雄亮さんならここで見るのではないかと思ってましたよ」
どうやらうちの頭脳様は俺の行動なんてお見通しだったみたいだ。
てか今のセリフかっこいいな!やはりって自信持って言えるのは憧れる。
「久しぶりだな。区画も増えてここも大きくなった。お前の指示か?」
「ええ、こちらの雄亮さんに沢山働いてもらいましたから」
ちょっと街の風景を見ると至る所に草木が生やされていて美観にも気を使ってるのがよく分かる。
あれ一本一本メニューで買わないといけないんだよなー。それほど大きくない二層で結構疲れたのにこんなにやるなんて……旅に行って良かったー。
「建国宣言まで後どのくらいだ?」
「後、一時間ですね。今頃緊張でガタガタになってるんじゃないでしょうか?」
孔明が言うんだからきっとそうなんだろうな。
自分のことだが他人事なので俺は気にせずココアを飲む。
「各国の動きはどうなってる?」
「周辺国は友好的、その他の国はまだ様子見って所ですね。ただ、ウォルテニアの動きがきな臭いです」
ウォルテニア…………ああ神聖国か。あそこには勇者がいるからなあ。
もしも妖精の剣のような武器を持ってたら苦戦しそうだ。