占い
「おい、何でミスリル貨なんて出したんだ!あれは有用な情報だがせいぜい金貨五枚て所だろ!」
「そうだ。何を考えてる?」
二人が顔をぐいっと近づけて俺を問いただす。
「まあまあ、あの子達の言う通りならダンジョンでお宝を見つけて帰りゃいいじゃねえか。…………そんな怖い顔するなよ。近い、近いって」
「お待たせしましたーって何してるんですか?」
戻ってきた少年と手には赤い水晶玉が置かれていた。
コアちゃんの姿はない。
「あれ?妹ちゃんは?」
「あ、ああ少しお腹が痛くなったらしくて後ろで休んでます」
さっきまでは元気そうだったんだがな。
「その水晶玉きれいだね。それもスライム?」
オタクが話に割り込んできた。
「いえ、これはただの水晶玉です。俺占いが得意なんですよ。五層で迷ったときもこれでなんとか帰ってこれました」
何その超技能。欲しい。通常のダンジョンですら油断したら迷いそうになる奴らが多いから道順を覚えることに特化した冒険者もいる。
それを考えたらこの少年は十分に冒険者向きと言えるが……何で冒険者登録すらしてないんだろう?
「これで皆さんが幸せになるには何をすればいいか占ってみます。占いは外したことがないんで大丈夫だと思います」
そう言って少年は水晶玉に手をかざし始めた。
「むむむ、ほうほう、なるほどー」
「ど、どうだ?」
意味ありげにつぶやくので俺達の期待が高まる。
「ずばりここです!」
そう言いながら地図に書かれている五層のとある部屋を指さした。
「ここが……どうした?」
「さあ、そこまでは分かりませんけど……ここに行けば皆さんが幸せになる何かが起こる、あるはずです」
要領を得ないなぁ。ま、占いだしあまり期待せずに行こう。
何もなかったとしても、五層の浅めの部屋だ。片手間で行ける。
「はは、せいぜい期待しとくさ。それじゃ仕事に行くか」
「頑張ってくださいねー」
少年は俺たちが見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。