ダンジョンマスターからの挑戦
さて、話は戻り冒険者ギルドのモニターが切り替わって一人の男を映した。
突然のことで依頼の受注中にもかかわらず、モニターを凝視する冒険者たち。何事かと他の冒険者たちも集まりモニターに注目する。
「御機嫌よう、エスリメの冒険者諸君。俺はエスリメ国王であり、スライムダンジョン、ダンジョンマスターの雄亮だ。本日は諸君に俺からの挑戦を聞いてもらうためにギルドのモニターを借りさせてもらっている」
雄亮から事前に話を聞いていたリードやギルド職員はモニターが変わったことに驚きはしなかったが、話の内容は教えてもらってなかった為冒険者たちと同じくモニターを凝視する。
「さて、まずは今日までダンジョンを攻略してきた諸君に言おう。おめでとう!君たちは俺の想像以上の速さでダンジョンを攻略している」
ぱちぱちと拍手しながら賛辞の言葉を送る雄亮を見て、冒険者たちは得意げな顔になった。
「そこで俺からのご褒美だ。二つ俺のダンジョンの情報を君たちに開示しよう。これが俺のダンジョンの全体図だ。青い部分は君たちが攻略した場所、赤い部分が残りだ」
雄亮が表示した立体映像を見て、冒険者たちはあんぐりと口を開けた。
なぜならば、自分たちが攻略していたのは全体の十分の一もない端っこだったからだ。
経験上深くなればなるほどダンジョンのモンスターは強くなっていく。
冒険者たちは自分たちの寿命までに果たしてこのダンジョンは攻略できるのだろうかと絶望感に包まれた。
「そしてもう一つ!ダンジョンのとある場所には俺の宝物庫がある」
雄亮が立ち上がって転移した先を映すと先程まで絶望感に包まれていた冒険者たちの顔が明るくなった。
物語にしか出てこないような量の金銀財宝、所々にある超大業物の装備、それらが冒険者たちの冒険者魂をくすぐる。
「ここまで来て俺の用意した番人を倒せばここにあるすべてをくれてやろう。これは俺からの挑戦だ。期待している」
そしてモニターは何事もなかったかのように元に戻った。
「……………………」
「……う、うおおぉ!俺は行くぞ!」
しばらくの沈黙の後、一人の冒険者が雄叫びを上げた。
そして連鎖的に冒険者たちが気合の雄叫びを上げたり、何かを決心したように頷く。
「なあ、あんたソロのSSランク冒険者の孤高だろ?俺たちとパーティーを組まないか?」
既にギルドの一角ではパーティーの戦力増強の為に動く者たちがいた。
「……なぜだ?」
「あんなの見せられてじっとしてられるかよ。なんとしてもたどり着きたい。お前はどうなんだ?」
「…………お前たち、ランクは?」
「SSSランクパーティー、紫電」
「…………ふっ、いいだろう。たまにはパーティーを組むのも悪くない」
強者は強者と組みさらなく高みへ、弱者は自分たちもそんな強者に成れるように今まで以上に鍛錬の為にダンジョンへと入っていくのだった。




