絵本
「これは……」
「社会科の教科書、孔明たちの国の子供たちが社会の歴史、成り立ちを学ぶための本ですね」
めくると、なるほど宗教やら国やら様々なことが書かれている。
「教科書に書かれていることで更に専門的なことを知りたかったら司書のヒューマンスライムに言ってください」
「素晴らしい贈り物。ありがたく頂きます」
ふむ、しかし相変わらず見たことの無い製本技術だ。この本はどうやって作ってるのだろう?
私が教科書を熟読してると、ユースケ殿が子供たちに読み聞かせしている声が聞こえた。
ふむ、モモタローと言う少年がオーガー退治に行く話か。
……何?もしかしてあの絵本はモンスターを動物に例えてテイムの方法を教えているのではないのか?
基本、テイムするには人間からではなくモンスターから何かしらのアプローチがあるのだ。
食料を欲しがるモンスターに食料を与え、恩を売って使役する。それが普通のテイマーだ。
スライム程度ならばその必要はないが、強いモンスターだとこの手順は必須だ。
この絵本はそれを分かりやすく子供たちに説明している。
「ユースケ殿!絵本はどこにあるのですか?」
「え、えーっと……あっちの棚です」
なんだこれは!ほとんど教訓のある話ではないか!
私の知ってる童話は勇者が悪を倒しました終わりといった単純な流れの物語がほとんどだ。
これを読めば文字の練習になるだけでは無く、基本的な道徳教育にもつながるぞ。
「オットーさん。どうしたんですか?」
「いえ……ただ、やはりここは素晴らしいところだと考えておりました」
「は、はあ。ありがとうございます?」
この国は武や富だけでなく、智もある。
私も負けていられないな。
ここでの知識を国に持ち帰り、教育の充実を陛下に提案しなければこれからは生き抜けないだろう。




