交渉終了
「我々にとってもなかなか良い内容ですね」
「では」
「ですが」
ニッコリと笑った顔を真顔に戻して孔明は俺に目配せをする。
え、何?どうすれば良いの?ちょっと不満げな顔しとくか。
「まず、この貿易に関しては少々見直さなければなりませんね。我が国の技術の知識は出しても構いませんが、製品そのものの輸出はいただけません。輸出は少量、製法の指導はするので人材の派遣をしてください」
俺が気にも留めていなかったことを孔明は挙げてその修正を次々としてゆく。
技術か……アダマンタイトを加工できるのは、一部のドワーフの達人のみらしい。
しかしそれは、俺のスミススライムを除けばだ。
ダンジョンのスミススライムの出現度と、外にいるスミススライムの技量を下げておこう。
オリハルコンスライム程度まで下げるか。
……考えてみれば、俺のスライムたちも技術の流出か。
いっそのことテイムもやめるか。
「世界規模の監視網なのですからそれはやめないでください」
なぜか孔明に心を読まれた。
そういえばそんな目的もあったなー。
「我々の要求はこちらです。国へ持ち帰ってください」
「はい……確かにお預かりしました」
持ち帰ってとは言ったけど、どの国の首都も日帰りできるんだよな。
せっかく来てもらったのにすぐに返すのはどうなんだろうか。
「なあ孔明、大使の皆さんにしばらく滞在してもらおうぜ」
「どうしてでしょう?」
「実際に住んでもらってこの街の素晴らしさを感じてもらってから報告に行ってもらった方が、内容の詰まった報告になるだろ?」
「良い考えです」
孔明は笑ってるが、驚きはない。多分俺が言わなかったら自分で発案してただろうな。
俺がちゃんと思いつけるか試してたんだろう。
「大使館を作ってくる。孔明はもう少し話を詰めてくれ」
「御意」
そういやショップに大使館ってあったな。
縁先輩はどこまで想定してショップの商品を設定したのだろうか?
俺は孔明の智よりも先輩の先見の明のほうが恐ろしかった。




