少年の正体
「ここの主殿は、名君の器があるのでしょうな」
「あぁ、ありがとうございます」
「え?なぜあなたが礼を?」
「私がこのダンジョンの主、雄亮です」
彼が名乗った瞬間その場が凍りついた。
このようなヘラヘラしてなんの覇気もない少年がダンジョンマスターだということが信じられなかったからだ。
だが、思い返してみればあの老人は少年に敬意を持っていたように見えたし、コーメイのことを尊称をつけずに呼んでいた。
「私のような若輩が彼らの主で驚いたでしょう。ですが事実です。私はスライムダンジョンのダンジョンマスター、雄亮です」
淡々と自己紹介する少年を、ダンジョンマスターだとは信じられなかったが、わざわざ我々に嘘を言う必要もない。
と言うことは真実なのだろう。
「は、ハッハッハ今まで正体を黙っておられたとは、なかなかお人が悪い」
「最初から正体を言ってしまえば私に注意が行ってしまって、街への驚きが半減したでしょう」
むぅ……確かにそうだ。
ここは街も主も心臓に悪い。
「あなたがここの主なのなら、これを。我らの主たちからの書状です」
私は各国が連名で書いた書状をユースケ殿に渡した。
「……拝読します」
彼は初めて見せる緊張した面持ちで書状を開いた。
彼の表情はこちらの方が素に近いのではないのかとわたしは思った。