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認識の甘さ

「老師、孔明を呼んできてくれないか?」


「御意」


 老人が部屋を出たところで護衛の一人の腹が鳴った。

彼は顔を真赤にして腹を抑える。


「あっ、失礼しました!」


 無理もない。朝に街を出てからここに来るまで何も食べてなかったのだから。

 かく言う私も空腹気味だ。


「ちょうど昼時ですしね。孔明が来るまでまだ時間はありますし、食事にしましょうか」


 少年が奥に消えていき、戻ってくるとその手にはかごがあり、中には透明な蓋の箱が入っていた。


「すみません。安物しか無かったのですが、ひとまずはこちらで我慢してもらいたい」


 少年は安物と言っていたが、その匂いをかぐとどれもがどう考えても香辛料がふんだんに使われていることが分かる。

 箱は一つ一つ違う物が入っており、我々は思い思いの物を取り蓋を開けた。


「これはなんと言うものなのでしょう?」


「コンビニ弁当です(さすがに安物すぎて怒ったかな?)。ゼガン殿のは牛カルビ弁当ですね(ゼガンさんのが一番高いんだけどなあ)」


 こんびに弁当。聞いたことのない弁当だ。この容器も見たことも聞いたこともない素材で作られていて興味深い。


 だがそんな事はもうどうでもいい。私は一刻も早くこの香しい匂いの弁当を食べたかったのでスプーンで肉と米を口に運んだ。


 ああ、やはり美味い。そして予想通り香辛料をふんだんに使われている。

 貴族の私でもこのような料理年に一度でも食べられるか分からない。


 そもそも貴族の抱える料理人は殆どが、料理の見た目だけを気にして味には頓着しない。

 それでも、高級な食材を使ってるのでそれなりには美味いのだが、この弁当は違う。ひたすら美味しさを突き詰めた味だ。


「気に入って頂けましたか?街でも売ってるので良ければ買ってください」


「おいくらするのですか?」


 いくらかかろうとも買う気でいるが一応値段を聞く。

 銀貨一枚をたくさん買ったら流石に家宰に叱られる。


「5DPです。あ、DPは街の通貨で、1DPはガタカ半銅貨一枚と同等です」


 安い!どうなっているのだこの街は……いやいや、目を向けるのはそこではない。自分たちだけの通貨。もうここは自分の国とでも言いたいのか。


 ………………いや、ここは既に街ではない。国だ。

 私の認識が甘かったようだな。

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