学者が卒倒する大図書館
居住区に入り、少ししてから少年は再び板を出して誰かと話していた。
「うん、分かった分かった。それじゃあな…………それでは皆さんに一つ面白いものをお見せしましょう」
そう言って歩き出した少年に慌てて付いていくと、一つの大扉の前で止まった。
「こちらです。ではご覧ください」
扉の先にあったのは私が子供の頃に物語で聞いたような大図書館だった。
目当ての本を探すだけで一日かかりそうな広さ、だけどそんな広さでもどの棚にも本がぎっしりと詰まっている。
世の学者が見たら卒倒しそうな光景だ。
バタン。
貴族でもあり、学者でもあるクロノ帝国の大使のオットー殿が倒れた。
私の比喩は比喩では無かったようだ。
「ああ!大丈夫ですか?エクストラヒール」
「はっ⁉失礼。本の多さに興奮して思わず意識を失ってしまいました」
「ははは学者さんですか。街にはここほどではありませんが図書館があるので後で行ってみるといいでしょう」
しれっと使っていたが、どうしてあの少年は最上級の回復魔法が使えるのだ?
ダンジョン側の者が回復魔法を使ったことを教会関係者が知れば発狂することだろう。
老人は中々の使い手だと思っていたが、少年の方も侮り難い。
図書館を後にしたあと(オットー殿の目から涙が溢れていた)我々は応接室のようなところへ通された。
「申し訳ない。本来は数人で使う部屋なので座れない方々はこれに座ってください(パイプ椅子で怒られないかな?)」
少年が持ってきた折り畳まれた椅子は、細くて簡素な作りだったが、試しに座ると案外座り心地が良かった。
ソファに座ると天に昇るほどふかふかだった。きっと王族の寝具でもここまででは無いだろう。王国では子爵程度の私が座る事ができないだろうと思われた。