チート兄弟
「もうちょっと駆け引き的な物を期待してたんだが……」
「私も同じですが、あなたが初手から強カードを切ってきたので思わず飲んでしまいました」
孔明の荷物をアイテムボックスに収めるとみんな目を丸くしていた。
馬車に戻ると流石に慣れたのかほうとだけ言った。
「そういえば私の勇者としての力を教えていませんでしたね」
「転移魔法だろ?」
「いいえ、それは勇者全員が持ってる言うなれば標準機能です。勇者は一人一人に特殊な能力を持ってるのです。例えば私は一度得た知識を絶対に忘れず、自在に引き出すことができます」
へー、勇者ってそんなの付いてるのか。
孔明の能力は一見地味だがすごい能力だ。
分かりやすく言うなら、教科書を初日に読んだだけで全て暗記できるってことだな。学生からすれば喉から手が出るほど欲しい能力だろう。
「均の能力は?」
「未来予測。的中率百なので実質予知ですね」
「僕が予測したいくつもの未来の内最良の物を、兄さんの知識を使って現実にする。そうやって神聖国から逃げて龍人の里に行ったんです」
すごい。最強の兄弟だ。一人でも厄介なのに二人が揃ったら誰も勝てる気がしない。
本当に仲間にできて良かった。
「ユースケ?帰ったのね。てことはその人が孔明ね。あたしはヴァイオレット。よろしく」
「よろしく。私は孔明、こっちは弟の均です。ところでお嬢さんの後ろにいるのはデスパラディンですか?」
「ええ、こっちは黄忠、こっちは馬超よ」
三国志を読破したヴァイオレットは名付けのしていないデスパラディンに片っ端から三国志の武将の名前をつけていった。
見事にハマったようだ。
「それはまた趣味のいい。あなたの好きな三国志の人物は誰ですか?」
「呂布!」
「なぜ?」
「強いから!」
単純な理由だなあ。
「雄亮さんは?」
「俺?えーっと、やっぱり孔明かな。他は徐庶とか龐統とか」
俺の雄亮の亮は孔明の名前から取ったって親が言ってたしな。
「ははは。やはりあなたとは仲良くなれそうだ」
孔明は目を細めて言った。




