勧誘
「やあ、こんにちは」
「こんにちは。臥龍先生」
「ふふん。分かってるじゃないですか。やはり貴方も召喚者なのですね?」
コーメイは愉快そうに笑って起き上がり、急須で茶を注ぎながらそう言ってきた。
劉玄徳とか臥龍先生とか三国志について分かってたら、ほぼ間違いなくこの世界の人間じゃないからな。
「はい。もっとも、神聖国に召喚された訳ではありませんが」
「……ほう。あの国以外で異世界召喚の術が使える国があったとは。一体何をなさってるのですか?」
「ダンジョンマスター」
さすがに彼も驚いたのか、飲んでいた茶を吹き出してしまった。
「ダンジョンマスター⁉あのダンジョンマスターですか⁉…………ズバリ、スライムダンジョンでしょ!」
「正解だ。一瞬素が出たなコーメイさん。まずは自己紹介だ。俺は雄亮だ。よろしく」
「……おほん。私は孔明です」
「本名は?」
「捨てました」
本気でなりきってるんだな。
さて、驚くときはちゃんと驚くことが分かったけど、その後すぐに俺がスライムダンジョンのダンジョンマスターだということを予想できてるので、噂通りの智者らしい。
何が何でも味方に引き入れたいな。
「孔明、俺のもとでその才能を使う気はないか?」
「早速本題ですか。私の心の中ではほとんど誘いに乗る気でいますが、それでは少々芸が無い。弟も養わないといけないので」
嘘だ。兄よりもしっかりしてそうなあの弟を養う必要はない。
なにか欲しいものでもあるのか?
「先生は何を望む?」
「知識。私の知らないことなら何でも。あなたにそれがありますか?」
「…………うちのダンジョンに日本中の書籍を集めた図書館が」
「行きましょう」
早!なんだこの茶番は。
孔明は善は急げとばかりに荷造りを始めた。
均と童も呼んでまたたく間に家の中のものを荷車に乗せきった。




